人たらしの流儀
PHP文庫
2013年
1 概要
2 苦言
3 甘言
4 その他
1 概要
本書は、佐藤優氏の経験則から導かれた「対人スキル」を指南するものである。
ここでいう「対人スキル」とは、相手が有している有益な情報をいかにして引き出すかという点に特化されている。
この点は、一般的な対人スキルを指南する、いわゆるコミュニケーション本との差別化となっている。
2 苦言
本書では、構成として対話形式が採用されている。
これが煩わしい。
元来のレイアウトからしても文字が少ないところ、対話形式によってさらに情報量が減殺されている。
一般に、対話形式の利点として、対話者の質問によって行間が埋められること、鋭い質問により回答者の頭の引き出しが開けられること、などが挙げられる。
しかし、本書ではこれらの利点は見いだせない。
質問者は、ただただ佐藤氏の発言に感心するのみである。
あえてこのような形式を採用しているのかもしれない。
しかし、私はこの形式を採用する利点を全く見いだせない。
3 甘言
ここまで、冗長に苦言を記してきたが、本書で面白いと思った部分も多い。
適当に要旨を列挙すると、
・酔った相手が漏らした情報は、素面の時に再確認してはいけない。
相手が警戒するようになるからである。(43頁)
・人間は誰しも、自分の考えを他人に聞いてもらいたいという願望がある。
まじめな人ほどこの願望は強い。(47頁)
・人間の魅力は対人関係の中でしか磨かれない。
がっつかないことが重要である。(64頁)
・人間関係を構築していく上で特に気をつけるべきなのは、お金・お酒・女性。(165頁)
・「こいつ自分より下だな」と思っている相手が客観的には自分とイーブンくらいに位置づけられる。(166頁)
・テクネーとエピステーメーの違いを理解せよ。(216~218頁)
最後に、あとがきの記載はとても重要である。
全体を通じ、私が強調したのは、たった一つのことだ。
それは、「相手の内在的論理をとらえろ」
ということである。
・・・わかりやすく言うと、
「相手の立場になって考える」
ということだ。 221~222頁
4 その他
本書の類書として、『野蛮人のテーブルマナー』がある。
こちらの本の方がユニークなタイトルである。
くわえて、本書よりも情報量が多い(気がする)。