こころ
おすすめ ★★★
近代ゴリラレベル ★★★
1 はじめに、概要
最近、ある機会があって、夏目金之助の『こころ』を再読した。
同作はあまりに有名であり、概要を記す必要はないだろう。
2 コメント
「精神的に向上心のない者は馬鹿だ」という謎の名言が繰り出されたりする本作は、今なお、魅力を放っている。
もっとも、今回、本作を再読する際、知人から面白い指摘があったので紹介したい。
私は、本作を「先生」が友人であるKとの関係で致命的な失敗をするという一個人の具体的苦悩を描いた作品だととらえていた。
しかし、その知人は、以下のとおり指摘する。
本作では、終盤において意味ありげに、時代に殉じた乃木希典大将が持ち出されている。
これが意味することは何か。
一つの可能性としては、時代の変遷により存在意義が問われるようになった知識人の行く末と乃木大将の最期を重ね合わせたのではないか。
つまり、知識人の苦悩という一般的な構造を描きたかったのではないか。
小説の解釈は一義的に固定できないことが多く、必ずしも一つの「正解」を見つける必要はない。
もっとも、上記指摘は今まであまり意識していなかった伏線を強調したものであり、興味深いと思い、紹介した次第である。