本人 vo.09 大至急本人を!
スーパーバイザー 松尾スズキ
ひろゆき他 著
2009年
1 概要
時の人に対するロングインタビューを売りにした雑誌であるらしい(私は、本誌の他号を読んだことはない。)。
本号では、平成21年当時のひろゆき氏のロングインタビュー等を収録する。
2 コメント
偶然、本棚に置かれていた本書が目に入ったため、久し振りに読み返してみた。
「世界の仕組みを解き明かしたい」と題したひろゆき氏へのインタビューが面白い。
この当時から(むしろもっと昔から)、同氏は、理屈を柱として生きていることが分かる。
インタビューの中では、ひろゆき氏は、「ロジック」を連呼する。
感情を廃した理知的な発言をしつつ、隙があれば煽ってくるという彼のキャラは、海堂尊氏の小説『チーム・バチスタの栄光』に出てくる「ロジカルモンスター」白鳥を彷彿とさせる。
例えば、逮捕、勾留については、不利益の最小化は黙秘であるということを前提に、喋らない自分をいかに喋らせるかを観察することで取調べスキルを学べる貴重な場であると割り切る(19頁)。
また、自らは、新たなものを創造する天才ではなく、他人の考えたものごとを説明することが得意な人間であると冷静に自己分析をする場面もある(35頁)。
加えて、「頭の悪い人とはつきあいません」などと煽りも忘れない(10~12頁)。
インタビューの中で最も興味深かったのは、タイトルにもなった「世界の仕組みを解き明かしたい」という章である(39~40頁)。
世界が現にある形態であることには原因があるはずであり、それについて仮説を立て、解明する暇つぶしが好きだという。
本インタビューではひろゆき氏の「核」の部分が剥き出しになっているように感じられ、久し振りに読み返してみても陳腐な感じはしなかった。
なお、最近では、発言対象分野を広げた結果として、前提事実が不確かな事項についての断定的発言などが散見されるのは多少残念である。