近代ゴリラの読書感想文

元予備役。司法試験合格。国家総合職試験合格。

 近代ゴリラ=インテリジェントゲリラ

【読書感想文】スパイシリーズ

新潮選書でフリーマントル著、新庄哲夫訳で、諜報について扱ったいくつかの本がある。
 
 この一連の本について、正式なシリーズ名が付されている訳ではないが、私は勝手に、スパイシリーズと呼んでいる。
 
 このシリーズは、少し古いので、時の経過により陳腐化してしまった内容も多い。
 
 
 一方で、普遍的な技法、哲学、諜報員としての資質なども示されているため、こちらについていくつかとりあげる。
 
 なお、書籍画像が貼れなくて寂しかったので、別の書の画像を貼っておく。
『スパイのためのハンドブック』も興味深い一冊なので、気が向いたら紹介したい。

スパイのためのハンドブック (ハヤカワ文庫 NF 79)

 
 
1 KGB
 (昭和58年)
 
 
「言葉は行動と関係がないーそうでなければ、外交術は成立しないはずだ。
 言葉と行動はまったく別個のものである。
 美しい言葉は醜い行為を隠すための仮面にすぎない。
 誠実な外交というのは、乾いた水とか木製の鉄と同じように考えられないことである。」(スターリンの言葉)(51頁)
 
 
 
「モスクワには、世界に比類がないほど詳細をきわめた分刻みの記録収集システムがある。
 ・・・情報組織の役に立ちそうな外国人の伝記的事実が微に入り細にわたって集められていた」(171頁)。
 
 
 
「西側のジャーナリストがわれわれの真意とはまさしく正反対のことを書くように、われわれはたえず彼らを仕向けなければならないのだ。
 われわれの真意を、西欧的な意味合いで正確に、客観的に書いたり述べたりする者があれば、われわれはただちに彼らを右翼かファシスト赤狩り時代(マッカーシズム)を再現する者だとして否認し、嘲笑されるように仕向けなければならない。」
 
このような戦術を逆(偽)情報工作(ディスインフォメーション)という」(176頁)。
 
 
 
 
2 CIA
 (昭和59年)
 
「むしろ、情報機関の世界では、・・・うそをつくのが義務だったと解されているのである。」(71頁)
 
 
 
「情報活動は、外套と短剣といった昔風の陰謀、あるいは、スパイ小説のそれとはまったく関係がない。
 苦心惨憺、いや、一般的にはいえば退屈きわまりない事実の収集、分析活動であり、判断力の行使と、迅速にして明快な価値判断を下すことが要求される」(128頁)
 
 
飲酒癖は大目にみられ、アル中ですら同様である。
精神的不安定の徴候となる可能性も問題視されない。
一方で、金にこと欠くのは買収されやすい人物として敬遠される。
(130頁)
 
 
「ちょっと嘘をつくんだ、・・・ほんのちょっとした嘘をな。」(183頁)
 
 
 
「私は二十五年もCIAで働いたが、その間いつも、自分は権限を委任された範囲内で働いていること、また正当な手続によって要請されたことを実行しているのだと思いつづけてきた。
たとえ独自の判断に従って行動する場合も、期待されているとおりに、ただCIAの正当なビジネスと信じることをやっているだけだと思いこんできた」(242頁)
 
 
「この男はむろん善悪の識別を心得ているが、世間からみて道徳に反するような仕事をあたえられても、担当工作官が実行せよという命令を出したのでそうする必要があると考えれば、それは彼にとっても善である。
 彼は良心の呵責を何一つ感じずに、命令を実行すべく忠実に適切な行動をとれる。
 要するに、いかなる行動も合理化できる男だ」(276頁)
 
 
 
 
3 産業スパイー企業機密とブランドの盗用ー
(1988年)
 
領収証をとるというのは東欧圏のスパイ工作における常套手段である(90頁)
 
 
シリコンバレーのハイテク企業は冷遇された従業員から受けるリスクをよくわきまえている。
 IBMは世界最大のハイテク会社になると同時に、従業員に最高の配慮を払うという目標を打ち立てた(97頁)
 
 
 
 
以上、断片的な紹介となってしまった。
 
これら3冊で相当の頁数と情報量があるものの、このような断片的な紹介となったのは、私の興味をひく部分が限定的だったからである。