心との戦い方
ヒクソン・グレイシー著
沢田啓明 取材、翻訳
新潮社
2013年
1 概要
ヒクソングレイシーによる自己啓発的エッセイである。
『ヒクソン・グレイシー 無敗の法則』の続編である。
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2 コメント
論調としては、前著と大差はない。
本書は、タイトルにあるとおり、「心」を強調している点に前著との違いがある(もっとも、前著でも「心」については扱っている。)。
章のタイトルも「恐怖心に打ち克つ」、「感情をいかにコントロールするのか」、「心の準備の整え方」、「アクシデントにも静かな心」などが並ぶ。
ヒクソンは、自らを「スポーツマンでもアスリートでもなく、戦士なのだ」と表現する(224頁)。
ヒクソンが格闘家として異彩を放っていたことは周知の事実である。
本書でも、ヒクソンの独特の感覚に基づく表現が散見され、その点が興味深い。
実際に、試合を前にして「勝てないかもしれない」と考えたことは一度もない。
しかし、結果として負けることがありうることは理解していた。
つまり、「負けるとは思わない。しかし、勝負事だから、負けることもありうる」と考えていたのである。(22頁)
・・・自分のすべての行動を、まったく同価値と捉えるようになったのである。
すべての行動において、同等の緊張感を保つということではない。
しかし、自分のエネルギーを出し惜しみせず、全力で物事に当たるという点に関しては、何をやるにしても変わらない。
・・・もちろん、私だって疲れることはある。
そういうときには、しっかり眠って、できるだけ早く疲れを取る。
つまり、眠るのにも最大のエネルギーを注ぐというわけだ。
別にリラックスするのが悪いと言っているわけではない。
しかし、リラックスをするときも、全力でリラックスしたらどうか、というわけだ。
わかっていただけるだろうか。(206~207頁)
最後は以下のとおり結んでいる。
すべては、自分の頭の中にあるものなのだ。
他の場所にはない。(251頁)