読書脳 ぼくの深読み300冊の記録
立花隆
2016年
文春文庫
1 概要
第1部の小稿と第2部の書評という二部構成のシリーズ物の4冊目である。
第1部は、「読書の未来」と題する対談である。
なお、今回、本書を読んだことで、私は、このシリーズを全て読んだことになる。
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2 コメント
(1) 第1部「読書の未来」
対談の主たるテーマは、「紙の書籍は死んだのか」である。
本対談では、ひとまとまりのテクストを熟読する手法の有用性が繰り返し説かれている(17~19頁等)。
この手法が、本当に有用であるのかに留意しながら、知的活動を続けていくべきだろう。
この対談が行われたのが2013年5月であるが、電子書籍の機能は、この対談で想定されている機能よりも拡充された。
例えば、本書では触れられていないが、英語書籍を読む際の辞書機能は紙の本と比較して圧倒的に便利である。
また、読み上げ機能は、まったく別の観点から利便性をもたらした。
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ただし、電子書籍の機能が拡充された現在においても、この対談における、専門書は、kindleではくたびれるという指摘や、紙の書物の方が、媒体の性質上、記憶が容易であるという指摘(22~23頁)は当てはまると思う。
もっとも、これらは、大学時代という読書時間を大量に確保できた特異な期間において、主として紙の書籍から知識を得ていた私や対談の両名にあてはまる、単なる慣れの問題かもしれない。
そのため、読書経験の大半が電子書籍によって構成されている層は、逆のイメージを持っているかもしれない(例えば、ハードカバーを持つ手が疲れ、本の内容が頭に入ってこないなど)。
恐らく、「紙書籍VS電子書籍」論争は、突き詰めると、諸科学の動員も必要な深淵な領域に進出すると思われる。
私の実感としては、現状でも、本の持つ利点が全く無効化されることはないため、両媒体の特性のいいとこどりをすれば良いと軽く考えている。
(2) 第2部(私の読書日記)
このパートで紹介されていた中で最も印象的だったのが『石田徹也全作品集』である。
遺作集を見ていると、石田がずっと前から、このような形で自分が死ぬことを予感していたような気がした(397頁)。
私は、早速、同作品集を購入して読んだ(見た。)。
これまでの私の興味、関心からすると、本書評がなければ同作品集を購入することはなかったと思う。
普通であれば手に取らない類いの本と遭遇できることは、書評の醍醐味である。