監督 豊島圭介
私は、これまで、三島由紀夫と東大全共闘との討論のいくつかの場面は観たことがあった。
この映画では、今まで観たことのなかった場面も取り上げられていたため、この一事のみをもっても、この映画を観た価値はあったといえる。
平野啓一郎氏による理知的な解説が、個人的には好みだった。
また、芥政彦氏は、この映画の撮影の時点で70歳を過ぎていたが、ブレていなかった。
一種の言葉遊び、皮肉の含意があったとはいえ、三島由紀夫をして、「諸君が天皇と一言言えば喜んで手をつなぐ」と言わしめたことは理由なきことではない。
三島由紀夫は、全共闘に対して、欺瞞、偽善では到達できない何かがあることを認めていたのだと思う。
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なお、上記記事では、「この映画を見る予定はない」などと息を巻いていたが、結局は、観ることとなった。
この映画で、私が、最も印象的だったのは以下の場面である。
「右翼左翼の対立じゃなかったとすると、共通の敵というものは何になるのですか?」
この問いに対して、芥氏は、深く顔をしかめた後、こう述べる。
「あやふやな猥褻な日本国。」