宮本隆司:首くくり栲象
宮本隆司著
BankART1929
2018年
今更ながら、たくぞうさんの写真集が出ていたことを知った。
学部生の時、たくぞうさんの庭劇場にお邪魔した。
人間が首を吊り、地面から離れた両足が不規則に揺れている光景には、何とも形容できない不気味さがあった。
私は、たくぞうさんと山形の修行で知り合った。
たくぞうさんの言語表現の多くには身体的感覚の表現が伴っていた。
身体という具現化したものに言及しているにもかかわらず表現自体は極めて観念的であった。
たくぞうさんの感性はこのアンビバレントさによって基礎づけられていたのだと思う。
修行が終わり、一定期間が経過した後、私は、庭劇場に赴こうと、たくぞうさんに電話をかけた。
「○○です。ご無沙汰しております。」
「お-、○○か!! 久し振り!!」
修行の時には聞くことがなかった、そして、それ以降も聞くことがなかった異常なほど朗らかな声色で、たくぞうさんは応答してくださった。
本書を契機として、たくぞうさんに思いを巡らせた時、この時の声が私の頭の中に反響した。
合掌