桑田佳祐言の葉大全集 やっぱりただの歌詩じゃねえか、こんなもん
桑田佳祐
新潮社
平成24年
本書は、桑田佳祐のソロ名義の歌詞を集め、楽曲が作られた当時の背景を紹介し、一部の歌詞についてはコメントを付したものである。
まえがきで、歌詞に対するスタンスの変遷が示される。
メロディに対して文字数を埋めるため英単語を付け加える手法の多用から、歌全体で何を伝えるかという意識が芽生え、その後、「文として、詩として、読むに値するもの」を書くことを希求するようになった、とのことである。
読者は、この認識を補助線として本書に収録された歌詞と向き合うこととなる。
ここでは、「波乗りジョニー」に付されたコメントを紹介したい。
実は大学生の頃から、「いつかこのタイトルで曲を作ろう」と思っていた。
東海道線の座席に座りながら、「波乗りジョニー」っていうのは語呂もいいし、いつか作れたらいいなあ、と真剣に考えていた。
いや妄想していたのだ。
114頁
思い付きのアイディア(あるいはアイディアとは言えない妄想)は日々の中で頭の中に去来し、具体的な形で結実することは多くない。
もっとも、思いつくからには、それを生成するだけのある種の熱量があるはずである。
そして、葬られることなく残り続けた事象には、言葉では形容しがたい無意識の偏愛があるはずである。
このような自らの感覚にはより自覚的でありたい。
「俺はやっぱり、ファンタジーを司るエロ神主だ・・・」(330頁)
上記の「波乗りジョニー」のエピソードを知った後では、このどうしようもないコメントすら何とも心強く感じてしまうのである。