近代ゴリラの読書感想文

元予備役。司法試験合格。国家総合職試験合格。

 近代ゴリラ=インテリジェントゲリラ

【読書感想文】反省

反省 私たちはなぜ失敗したのか?鈴木宗男、佐藤優アスコム2007年 約15年前の書籍であり、話題としては旬を過ぎているものが多い。 その中でも、現在でも参照すべき部分があるとすれば、その部分は一定の普遍性を帯びた人間考察、組織考察を提示していると言…

【読書感想文】同志社大学神学部

同志社大学神学部 私はいかに学び、考え、議論したか 佐藤優 光文社新書 2015年 本書は、佐藤優氏の大学、大学院時代の経験、学びのダイジェストである。 佐藤氏の学生時代の出来事は『私のマルクス』でも触れられていた。 本書は、マルクスに関する事柄を主…

【読書感想文】女たちのアンダーグラウンド

女たちのアンダーグラウンド 戦後横浜の光と闇山崎洋子亜紀書房2019年 本書は、主に戦後の横浜を対象として、歴史の闇の中に葬られそうになっていた不遇な女性たちに光を当てる。 歴史を編纂する上で意識的、無意識的に捨象される不都合な事実に目を向け、人…

【読書感想文】悲の器

悲の器高橋和巳河出文庫2016年 本作品は、権威主義的法学者が私情で破滅していくという明確な舞台設定で展開する。 論理で割り切れない情念に飲み込まれていく中で、高尚な理念や理論が空虚に響きわたる場面が何度も描かれる。 上述の舞台設定のもとでは、理…

【読書感想文】謝罪論

謝罪論 古田徹也 柏書房 2023年 本書は、哲学・倫理学を専門とする古田准教授による著作である。 本書は、分析対象を謝罪に設定したことで、類書がほとんど存在しない書籍に仕上がっている。 本書のエピローグでは、具体的な謝罪のための「実践的なヒント」…

【読書感想文】読む・打つ・書く

読む・打つ・書く三中信宏東京大学出版会2021年 一見奇をてらったタイトルに見える「読む・打つ・書く」は、「読書論・書評論・執筆論」を意味する。 理系研究者による読書論・書評論・執筆論のエッセイであり、著者もあとがきで自負するように類書は少ない…

【読書感想文】Chat GPTは神か悪魔か

Chat GPTは神か悪魔か落合陽一他宝島社新書2023年 本書は、複数の著者のChat GPTに関する小稿を収録している。 以下の論稿は、ChatGPTの現在位置を直感的に理解でき、特に興味深かった。 ・「職業」は簡単には消滅しないという導入から、現時点における生成A…

【読書感想文】基礎から分かる論文の書き方

基礎から分かる論文の書き方 小熊英二 講談社現代新書 2022年 本書は、新書でありタイトルも軽い。 それゆえ、多くの者は、本書を見て、学部生向けの卒論作成のマニュアル本といった第一印象を抱くだろう。 しかし、本書を眺めていると、すぐに異変に気付く…

【読書感想文】天才はあきらめた

天才はあきらめた 山里亮太 朝日文庫 2018年 結論として、山里氏が天才であるか否かは問題でない。 本書では、細部への偏狭的ともいえるこだわり、下準備としての大量の反復作業、試行錯誤が多数の箇所で展開されている。 この一職人の矜持をくみとればよい…

【読書感想文】ユーモアは最強の武器である

" data-en-clipboard="true">ユーモアは最強の武器である " data-en-clipboard="true">スタンフォード大学ビジネススクール人気講義 ジェニファー・アーカー、ナオミ・バグドナス著 神崎朗子訳 東洋経済新報社 2022年 本書は、序盤の章でユーモアの効能を説…

【読書感想文】サラ金の歴史

サラ金の歴史 消費者金融と日本社会小島庸平著中公新書令和4年 本書は、研究者による著作であり、できる限り党派性を排除すべく記述されていることが良い。 サラ金の問題は、ひとまず業界とは距離を取り、歴史として批判的に整理される必要がある。 だが、か…

【読書感想文】実証史学への道

実証史学への道 一歴史家の回想 秦郁彦 聞き手 笹森春樹 中央公論新社 平成30年 本書は、現代史家(あるいは、「歴史鑑定人」※本書のあとがきを参照)である秦郁彦氏の回想録である。 回想録自体も読み物とし面白いが、時折さりげなく示される著者の歴史家と…

【読書感想文】最高の脳で働く方法

最高の脳で働く方法 デイビッド・ロック著 矢島麻里子訳 ディスカヴァー・トゥエンティワン 2019年 本書は、脳の有効活用するために脳の仕組みの言語化を志向する。 脳のプロセスの違いはそれほど大きくはない。 ・・・当然この変更は労力と注意を要し、自分の…

【読書感想文】地面師

地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団森功講談社文庫令和4年 本書では、積水ハウスが被害者となった事件をはじめ、複数の有名地面師詐欺事件が紹介されている。 地面師詐欺は、詐欺の大枠は大胆であるものの、細部の手口は極めて精巧である。 例えば、…

【読書感想文】監獄式ボディビルディング

プリズナートレーニング外伝 監獄式ボディビルディング ポール・ウェイド著 山田雅久訳 CCCメディアハウス 2019年 プリズナートレーニングの外伝である。 主として、トレーニングの背景にある総論を述べる。 gorillamodernism.hatenablog.com 相変わらず、こ…

【読書感想文】プリズナートレーニング

プリズナートレーニング 圧倒的な強さを手に入れる究極の自重筋トレ ポール・ウェイド著 山田雅久訳 CCメディアハウス 2017年 本書は、監獄でのトレーニングを背景とした自重トレーニングを相当な熱量で推奨する。 実証的根拠は乏しくても、自らの経験と照合…

【読書感想文】プーチンの世界 「皇帝」になった工作員

プーチンの世界 「皇帝」になった工作員フィオナ・ヒル、クリフォード・G・ガディ著濱野大道、千葉敏生訳畔蒜泰助監修新潮社2016年 二段組み約500頁の大作である。 文庫化されていないのは、内容の硬派さゆえに商業的には不発だったということだろうか。…

【読書感想文】KGBスパイ式記憶術

KGBスパイ式記憶術 デニス・ブーキン、カミール・グーリーイェヴ著 岡本麻左子訳 水王舎 2019年 タイトルの印象とは異なり、本書で紹介される記憶術はオーソドックスである。 人間の脳は視覚的イメージを記憶するのが得意である。 そのため、情報を記憶す…

【読書感想文】OPTION B

OPTION B 逆境、レジリエンス、そして喜び シェリル・サンドバーグ、アダム・グラント著 櫻井祐子訳 日本経済新聞出版社 2017年 本書では、夫を亡くし、「オプションA」を失った著者(シェリル・サンドバーグ)が、いかに問題に向き合ったかを振り返る。 完…

【読書感想文】ORIGINALS 

" data-en-clipboard="true">ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代 アダム・グラント著 楠木建監訳 三笠書房 2016年 " data-en-clipboard="true"> " data-en-clipboard="true"> " data-en-clipboard="true"> " data-en-clipboard="true"> " data-en…

【読書感想文】私のマルクス

私のマルクス佐藤優文春文庫2010年 本書では、佐藤氏が学生時代に思想的基盤を形成したことが確認できる。 佐藤氏の学生時代の勉強会の書籍のラインナップは、その後の佐藤氏の様々な著作で折に触れて紹介されているものを多く含んでいる(179頁)。 当時、…

【読書感想文】戦略読書

戦略読書 三谷宏治 ダイヤモンド社 2015年 『戦略読書』と題する本書を手に取る読者の関心は、読書により効率的に情報を取り込む方法論を知ることにあると思われる。 この読者の関心に応えるように、本書では、以下の等式を念頭に、一定の読書戦略が示される…

【読書感想文】亡命者の古書店

亡命者の古書店 続・私のイギリス物語 佐藤優 新潮文庫 平成30年 前作『紳士協定』では、聡明な少年であるグレンとの対話が大部分を占めていた。 未成熟な少年特有の悩みや感性が醸し出す独特の空気感が同作の特徴となっていた。 一方で、本作では、対話相手…

【読書感想文】紳士協定

紳士協定 私のイギリス物語 佐藤優 新潮文庫 平成26年 佐藤優氏は、外務省入省2年目に語学研修でイギリスに駐在していた。 この際のステイ先で出会った12歳の聡明な少年であるグレンとの会話や交流を中心に描いたノンフィクションが本書である。 本書の特…

【読書感想文】野蛮人のテーブルマナー

完全版 野蛮人のテーブルマナー 佐藤優 講談社 2014年 学生時代に講談社+α文庫で読んだ野蛮人のテーブルの完全版が存在していたことを知り、読んでみた。 『野蛮人のテーブルマナー』というタイトルが良い。 昨今の啓蒙書において跋扈している直情的、安直…

【読書感想文】松岡正剛の書棚

松岡正剛の書棚 松丸本舗の挑戦 松岡正剛 中央公論新社 2010年 松岡正剛がプロデュースした松丸本舗(2012年に閉店)において、各分類の書棚ごとにいくつかの本をとりあげ、松岡氏が一言コメントを付す。 ヨーロッパ近代は傑作中の傑作を数多く生み出した。 …

【読書感想文】知の教室

知の教室 教養は最強の武器である 佐藤優 文春文庫 2015年 本書は、教養を冠する著作である。 もっとも、私としては、本書の中に紛れ込んでいる佐藤氏の仕事の実情に関する記述に関心が向いた。 私は朝五時に起床し、起きたその瞬間から仕事にとりかかります…

【読書感想文】弱者の生存戦略 バウアー

Number 1076 バウアー「投球は科学であり、芸術だ」 文 生島淳 文藝春秋 令和5年 「メジャーリーグどころか、ダブルA以上の選手でトレバーより運動神経が悪い選手はいないだろう」(47頁)と評されたバウアーが、弱者の生存戦略を示す。 バウアーの生存戦略…

【読書感想文】研究者への道

研究者への道中田裕康有斐閣2023年 中田先生が、弁護士から研究への転身を決意した際のエピソードが興味深い。 決心がついたのは、夜中に目が覚めたときの状態に気がついたことです。夜中にふと目覚めたとき、弁護士であれば、事件のことが脳裏に浮かぶこと…

【読書感想文】相手への攻撃だけでは脆い

憂国論 新パトリオティズムの展開木村三浩彩流社2007年 まず、形式面として、インタビューで形式であるものの、話が逸れないため、散漫な印象はない。 問答、口頭による説明という理解を助ける利点を享受できる。 本書で、コンパクトながら、木村氏の思想上…