「陸軍中野学校」の教え 日本のインテリジェンスの復活と未来
陸上自衛隊元陸将 福山隆
ダイレクト出版
2021年
本書は、陸軍中野学校に関連付けて戦後史の裏側なども取り上げるなど、内容は多岐に渡る。
その中から、インテリジェンスオフィサーに求められる資質という点に絞って、いくつか取りあげる。
私自身の体験から考えて、人間として「ハート」があり誠実な側面も求められる。「虚」と「実」の世界を生き抜くためには、ジキルだけでもダメ、ハイドだけでもダメなのである。善悪を矛盾なく兼ね備え、複合的で一概には割り切れないような多重人格者がいいのではないかーと私は思っている。36頁
田中は生活スタイルをロシア人同様にして、彼らの風俗習慣に同化することを重視した。
前者の事項について、人は誰でも多少なりとも社会的立場に応じて人格を使い分けているはずである。
「多重人格者」という表現はいささか修辞的であるが、相対的に変動する通常の人格の使い分けをさらに推し進めて、人格を意識的にコントロールできる者といったイメージであろうか。
後者の事項については、「相手に受け入れられるためにはどうすれば良いか」という問いに極限の想像力を持って答えた結果といえる。
いわば、コミュニケーションの極致の具体化である。
前者については、意味内容が不明確であり一概にはいえないが、後者については要求される技能が明確にイメージできる。
後者の技能を考えるとき、特殊業務に応じた特殊技能も、普通の能力に基づく意識の徹底、延長線上にあるのかもしれないという思いを抱く。
インテリジェンスオフィサーに限らず、特殊技能を有する様々な者がいかなる事項を徹底しているかを見ることで、面白い発見があるかもしれないと漠然と思った次第である。
なお、上記の表現の意味内容が不明確であると述べたが、私の感想の論旨も多分に不明確である。