民法案内 1私法の道しるべ 第二版
我妻栄著
遠藤浩、川井健補訂
勁草書房
2013年
1 概要
我妻博士による民法の入門書である。
本書はシリーズ第1巻であり総論である。
2 感想
本書の文章は明快であり、情報の羅列ではない。
読み物としての面白さがある。
例えば、類推解釈と反対解釈の使い分けについては、以下のとおり説明する。
ある規定について類推解釈をすべきか反対解釈をすべきかは、純粋に論理的には決定されない。
もっとも、その規定が網羅的・限定的なものであるなら、反対解釈をすべきであり、主要なものの例示的なものであるなら、類推解釈をすべきだ、とはいえる。
そして、一般的にいえば、普通の制札などでは、例示である場合が多いであろう。
「馬をつなぐ者が多くて困るから、そう書いたまでで、牛・馬・犬・野生動物のすべてを検討して、馬だけはいけないと、限定する意味をもたないのが普通であろう。」148~149頁
また、第一章の「私法の学び方」では、「教科書や講義案の読み方」など、卑近な事柄にも言及しており、参考になる。
さらに、巻末には、「附録 私の勉強方法」がある。
法学徒であれば、我妻博士の勉強方法は気になるところだろう。
私の勉強のやりかたは、前にもいったように、徹底的に理解することである。
私が牧野先生の刑法の教科書を十何回読んだという伝説があるそうだが、非常な間違いである。
全体を通じて一〇回も読むようなやり方は決してしない。
わからないところは、二、三頁に、一日も二日も考えることはある。240頁