空気を読んではいけない
2019年
1 概要
青木選手の小中高、大学、警察官時代、プロ格闘家時代をなぞりつつ、具体的経験に即して箴言を示される。
2 コメント
本書のタイトルからは、エッセイ、あるいは、軽い自己啓発本という印象を受けるだろう。
各章の表題も以下の通り、いかにも自己啓発本という感じがする。
「人間関係を始末する」
「欲望を整理する」
「怒り、妬み、苦しみ、恐れ。負の感情をコントロールする」
「一人で生きていくためのサバイバル能力の養い方」
「他人の『幸せ』に乗らない」
しかし、本書は、単なる自己啓発本に終わらない。
青木選手の小中高、大学、警察官、プロ格闘家というそれぞれの時期における周囲との関わり合い、考え方、格闘技で勝つための工夫が示されており、自伝的な面白さがある。
青木選手いはく、自らに才能がないという前提で勝つことを模索した結果、今があるのだという。
しかし、それ以上に恵まれなかったのは、選手としての才能だ。中学の柔道部では補欠。指導者からは見放され、手厚い指導を受けた記憶はない。身体能力もアスリートとしては並以下。ジムでトレーニングしていても僕より基礎体力がある選手の方が多い。
本書を読むことで、青木選手のファイトスタイル、精神構造が確立していった過程を追体験できる。
団体との交渉などの舞台裏まで描かれているため、格闘技ファンは特に面白く読めるだろう。
また、青木選手の箴言は一般化できる形で示されているので、格闘技ファン以外も面白く読めるはずである。
一番効果的だったことは、1試合でもファイトマネーが支払われなければ、次の仕事はくけないと決めていたことだった。それで嫌なヤツだと思われたって構わない。
青木選手のスタンスは、タレントというよりは事業者のイメージに近い。
自分という商品の価値をいかに高めるかという視点が随所で強調されている。
「PRIDE」時代から、「自分の値段がいくらなのか」と常に考え、誰もが欲しがるような人材でいることを意識してきた。
世間では賛否ある選手であるが、賛否が生じている時点で青木選手の狙いが成功しているように思える。
備忘
(頁 No.)
415 食事をおごられるだけでも支配関係が生じる。
451 どんな些細な借りであってもその都度清算する。
565 自分の所持している物は全てその理由を説明できる。
590 才能に恵まれない者が一流を目指すのであれば、生活から贅肉をそぎ落として極力シンプルにする必要がある。
1037 自演乙戦は、自分の代表作であり、財産
1101 全ての練習に意味を見出した上で臨んでいる。