世界一のプロゲーマーがやっている努力2.0
ときど
2019年
1 概要
「東大にうかる」努力では、もう勝てない(帯)という煽りのもと、東大卒のプロゲーマーが、従来の努力論をVer.1.0とした上で、Ver.2.0の努力論を開陳する。
努力論を開陳する中で、プロゲーマーの生態系(?)も明らかとなる。
2 感想
(1) 機械的・合理的努力の先にある努力論
「努力の合理化を説く自己啓発本」については類書が多いものの、本書は、プロゲーマーによる努力論であることに特色がある。
受験時代からの機械的・合理的努力では通用しなくなった著者が模索の先に見出した新たな努力論が、本書の内容である。
他の人が見逃す1%の違いに、いかに気づくか。その感度が高ければ高いほど、刻一刻と変わる現実の変化に適応することができるのです。(46頁)
著者の生活態様も興味深い。
まず、大会でのパフォーマンスをあげるために、ウエイトトレーニングをしている。
筋トレの効果を最大化するために、お酒も飲みませんし、食事もトレーナーの指導に従って炭水化物はかなり減らしています。結構キツいですが、移動で疲れ切ってしまうことは一切なくなりました。(119頁)
次に、著者は、自らを「極度の面倒くさがり」と表現し、「自分が『動く』のではなく仕組みに『うごかされる』ようにする」ために、生活環境の簡素化、合理化を実践している(149頁~)。
例えば、以下のとおりである。
・あらゆる行動をルーティーン化する。
・ルーティーンを設定するときの3つのポイントは、以下のとおりである。
①1日の中に種類の違う行動を入れておく。
②ルーティーンにしばられない。
③「一番大事なポイント」だけは、きっちり押さえる。
・家に置くのはベッドだけ
(2) プロゲーマーの生態系
本書は、著者の活動や生活と結びつけて努力論が説かれる。
例えば、受験時代や現在の1日のスケジュール表の記載(155頁)もある。
活動や生活に結びつけた思考が披瀝されるため、密着取材のようなイメージでプロゲーマーという存在を理解することができる。
そこからは、フィジカルアスリートやクラシカルな盤面競技の競技者とは異なったエンターテイナーとしての矜持を垣間見る。
僕を通してゲームを知ってもらうということは、裏を返せば僕を通してゲームのイメージを持たれてしまう怖さがあります。・・・勝つためだけではなくそのような意味でも、普段からきちんとゲームに向き合う必要があります。体を鍛えることも同様です。大会で勝つための準備であると同時に「プロゲーマーはアスリートである」という思いも伝えたいのです。不健康でネガティブなイメージを持たれたくはありません。(206から207頁)