近代日本の精神構造
神島二郎
1961年
本書で、著者は、丸山眞男を西欧の伝統である普遍と抽象の学問をみごとに摂取した希有な人物であると分析している。
そして、丸山眞男の思想形成自体が考察すべき思想史的問題となると問題設定している(なお、本書は、大量の脚注が付されているところ、これらの興味深い記述についても脚注にある(90頁))。
このスタンスは興味深いが、学問的にどこまで奏功しているかは未知数である。
私は、本書のほとんどを読み飛ばしていたところ、その中でも自らの考えと相容れない内容が散見された。
そのため、私には、読書感想文を書く資格はないかもしれない。
しかしながら、本書の特異なあとがきについては触れなければならないと考え、筆をとった次第である。
本書のあとがきは、学術書のあとがきとは思えない情緒的な記述をたたみかけてくる。
特に、戦争、貧困の中における学問への渇望の部分は、驚きを禁じ得ない。
私はいままですべてをなげうって学問をしてきた。これをつづけて死のう。私の書いたものだけは、もしだれかの手に渡って興味をもってくれれば、あるいは伝えてくれるかもしれない。よし伝えてくれなくとも、最期まで獄門して死ぬならば本望だ!と。(352から353頁)