近代ゴリラの読書感想文

元予備役。司法試験合格。国家総合職試験合格。

 近代ゴリラ=インテリジェントゲリラ

【読書感想文】近代日本の精神構造

近代日本の精神構造
神島二郎
1961年
 

近代日本の精神構造

 
 
 本書で、著者は、丸山眞男を西欧の伝統である普遍と抽象の学問をみごとに摂取した希有な人物であると分析している。
 そして、丸山眞男の思想形成自体が考察すべき思想史的問題となると問題設定している(なお、本書は、大量の脚注が付されているところ、これらの興味深い記述についても脚注にある(90頁))。
 
 
 その上で、著者は、「形態的把握の明快さ」に長けていた丸山眞男と深い共感と鋭い洞察で日本人の「心意現象」に迫った柳田國男のアプローチの架橋を試みるというスタンスである(20から21頁)。
 このスタンスは興味深いが、学問的にどこまで奏功しているかは未知数である。
 
 
 
 私は、本書のほとんどを読み飛ばしていたところ、その中でも自らの考えと相容れない内容が散見された。
 そのため、私には、読書感想文を書く資格はないかもしれない。
 
 しかしながら、本書の特異なあとがきについては触れなければならないと考え、筆をとった次第である。
 
 本書のあとがきは、学術書のあとがきとは思えない情緒的な記述をたたみかけてくる。
 特に、戦争、貧困の中における学問への渇望の部分は、驚きを禁じ得ない。
 
 
 私はいままですべてをなげうって学問をしてきた。
 これをつづけて死のう。
 私の書いたものだけは、もしだれかの手に渡って興味をもってくれれば、あるいは伝えてくれるかもしれない。
 よし伝えてくれなくとも、最期まで獄門して死ぬならば本望だ!と。(352から353頁)