Chat GPTは神か悪魔か
落合陽一他
宝島社新書
2023年
本書は、複数の著者のChat GPTに関する小稿を収録している。
以下の論稿は、ChatGPTの現在位置を直感的に理解でき、特に興味深かった。
・「職業」は簡単には消滅しないという導入から、現時点における生成AIの可能性と限界について説く山口周氏の論稿(48〜87頁)
・現時点におけるChatGPTの具体的な機能特性について述べている野口氏の論稿(90〜123頁)
また、ChatGPTの根本原理を、手前の文字に「確率的にありそうな続きの文字」をどんどんつなげていくAIと表現する深津貴之氏の説明(165頁)は、端的で分かりやすい。
本書では、様々な見解が述べられているが、今後、一般的知識の価値が暴落することは確かである。
また、知識すべてが無価値になる潜在的な可能性はあるものの、それはもう少し先のことと思われる。
このような状況下で、現時点で人間が探究すべきなのは、「外れ値」(山口周氏)、周縁部の特性=「マタギ性」(落合陽一氏)であるとのことである。
本書は軽い読み物であるが、今後の人間の知性のあり方に関して思考を巡らせる起点を提供してくれた。