近代ゴリラ=インテリジェントゲリラ

【読書感想文】弱者の生存戦略 バウアー

Number 1076
バウアー「投球は科学であり、芸術だ」
文 生島淳
令和5年

Number(ナンバー)1076号[雑誌]

 
 「メジャーリーグどころか、ダブルA以上の選手でトレバーより運動神経が悪い選手はいないだろう」(47頁)と評されたバウアーが、弱者の生存戦略を示す。
 
 バウアーの生存戦略は、フィジカルトレーニングではなく、ハイスピードカメラを用いた徹底的な分析だった。
 本稿では、このバウアーの試みは、映像分析の先駆けであったと指摘している。
 
 運動能力の低い僕の特徴はブレイン、頭脳だ。
 僕は僕自身にコーチングできる。
 それも、誰よりも早く。
 ‥・学習速度を最大限加速できる頭脳が僕の武器なんだ(49頁)

 

 ただし、理性的な分析のみでは不十分である。
 
 24時間、1週間、365日、僕はそのことに情熱と時間を投下できる。
 何かにハマってしまったら、寝食を忘れてしまう性分なんだ。
 だからこそ誰よりも早く、新しいスキルを手にすることができるんだと思う(49頁)

 

 いささか修辞的に表現すれば、社会においては、誰もが何らかの場面では弱者になり得るといえる。
 そして、弱者が感覚のみで物事に対峙しても、凡庸な結果しか残らない。
 弱者が感覚のみでは到達し得ない領域に到達するためには、熟考し、物事を突き詰める姿勢を持たなくてはならない。
 さらに、その姿勢には熱情が伴うことが必要である。
 バウアーからこれらの重要な教訓を認識させられる。