研究者への道
中田裕康
有斐閣
2023年
中田先生が、弁護士から研究への転身を決意した際のエピソードが興味深い。
決心がついたのは、夜中に目が覚めたときの状態に気がついたことです。
夜中にふと目覚めたとき、弁護士であれば、事件のことが脳裏に浮かぶことがよくあると思います。
・・・これは、弁護士として自然なことですし、私もそうでした。
ところが、博士論文の最終段階になると、夜中に目覚めたときに思い浮かぶのは、論文に関することばかりになりました。
・・・自分が本当に打ち込んでいることは、夜中に目覚めたとき、無意識に頭に浮かぶことなのではないかと思いました。13〜14頁
理屈ではないのである。
自らの内なる情動、欲求を汲み取ることの重要さを実感する。
これは人生におけるターニングポイントのような重大局面に限らず、日常の行動指針としても意識すべき事柄かもしれない。
上述の経緯で研究者への転身を決意した中田先生は、本書の最後で、改めて研究者としての矜持を示して結ぶ。
研究者であり続けることは、自律と緊張を必要とする。
この研究者の道を、今しばらく歩き続けたいと思う。263頁