ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代
アダム・グラント著
楠木建監訳
2016年
オリジナリティのある人物は、その能力の根拠が才能に求められ、凡人では到達し得ない神格化された存在として描かれることが多い。
そんな中、本書は、可能な限りオリジナリティの化けの皮をはぐことを目指す。
・・・オリジナルなことを実現して成功している人たちの中身は、私たちとさほど変わるものではない。彼らも、みなと同じような恐怖や不安を感じている。56頁
オリジナルな人たちが徹底的にリスクを冒すことなどしない普通の人たちであること(40頁)などが具体例とともに示される。
また、知識がない場合は、じっくりと分析したときのほうがより確実な判断ができる(93頁)、「落ち着け」というアドバイスは間違い(329頁~)など、オリジナリティとの関連を度外視しても、役に立つ知見も含まれている。
恐怖心は強烈な感情だ。・・・この状態でリラックスしようとするのは、車が時速一三〇キロで走っているときに急ブレーキをかけるようなものだ。・・・強烈な感情を抑圧しようとするよりも、違う感情にすり替えるほうが簡単だ。332頁
本書は、タイトルの印象に反した、学者による堅実な内容である。
この堅実性ゆえの魅力は、空中戦が繰り広げられがちな類書の中ではかえって異彩を放つこととなる。