近代ゴリラ=インテリジェントゲリラ

【読書感想文】落合博満 バッティングの理屈ー三冠王が考え抜いた「野球の基本」

 
1 落合博満氏について
2 理論と理屈
3 一般化可能

 

 

1 落合博満氏について

 私は、落合氏に対しては好意的な印象を持っている。
 落合氏の合理主義的側面に惹かれるのである。
 
 落合氏の現役時代の活躍はもはや説明不要である。
 引退後は「オレ流」を標榜してドラゴンズを率いたことが印象的である。
 オレ流の手法は、合理的ゆえに冷徹なニュアンスを含む時があり、一定の反発にあった。
 しかし、実績という点からすると、やはり落合氏の方法が間違いだと断罪することは難しいだろう。
 現場でのやりにくさ等があったのかもしれないが、それは私の視点からは知覚できない。
 限定的な視点からの意見になることをご容赦願いたい。
 
 
2 理論と理屈
 私は落合氏の合理主義的側面に惹かれると述べた。
 本書でも合理主義が炸裂している。
 
 抽象論は高尚に響く。
 しかし、抽象論は現場の実践の段階では必ずしも適切な指針になるとは限らない。
 現場レベルで活用できる具体的な指針を与えるためには、現場における「感覚」が記述されていることが重要である。
 
 本書は、現場での具体的実践に直結する内容である。
 そして、一定の提言がある場合にはそこに理由付けがなされているため、単なる精神論とは一線を画する。
 
 何より、本書のタイトルを「理論」とせず、「理屈」としたところに落合氏らしさが表れていると思う。
 
 何度も繰り返し書いているが、私は、“バッティングの理屈”を考えている。
 野球の進歩によって多様化した理論よりも、誰にでもできる理屈の方が理解しやすいと考えているからだ。 
No 2516 ※kindle版の頁数(以下同じ)

  

 現場での実践にこだわる姿勢は、『五輪書』(宮本武蔵)を彷彿とさせる。

 
 
3 一般化可能
 本書は、タイトルの通り、バッティングに関する解説書である。
 しかし、本書で示されている考え方は、単にバッティングのみに当てはまるのではなく、より広く一般化できるものである。
 
 どんな仕事でも大きな成果を上げたいと思えば、いかにシンプルにやり切るかを追及するだろう。
 そして、シンプルに仕事を進めるためには、準備の段階でとことん考え抜き、何の不安もなく仕事に打ち込む態勢を整えなければならない。 
No28

 

 調子のよくない選手を見つけると、指導者はよく「基本に戻りなさい」とアドバイスする。
 この “基本”とは何か。
 多くの選手や指導者は、打つ、投げる、走るといった技術に関することだと認識しているだろう。
 だが、それは違う。
 本当に基本に戻るならば、人間としての生活の “基本”、すなわち食事と睡眠から考えなければいけない。 
No 395~406

 

「丁か半か」のバクチだって勝てる確率は5割あるのに、どうして3割で一流なのか。
 またバカげたことを…と思うだろうが、こういうことを考えるところから、私は自分の数字を高めていくための突破口を見出そうとした。 No480