山口組顧問弁護士
山之内幸夫著
角川新書(kindle版)
2016年
1 概要
タイトルが全てである。
2 コメント
(1)『山口組顧問弁護士』
当然、本書にサブタイトルなどは存在しない。
圧倒的なインパクトを与えるこのタイトルのみで読者を惹き付けるには十分であろう。
(2)社会構造の考察
「どのような者が組員になるのか。」という問いに対して、本書は一定の回答をしている。
「科学捜査研究所の調査によれば組員になった人間の生まれ育った環境は、親もしくは両親ともにいない欠損家族の出身者が四割に及ぶ。
子沢山の貧乏人と言うケースが多く七人兄弟と言うのがヤクザの平均兄弟数とのこと。」(kindle版 no.674)
つまり、本書では、偶然性が人生を規定することが強調されている。
(3)なぜ著者は山口組顧問弁護士となったのか
本書を手にとる読者の最大の関心はやはりこの点だろう。
しかし、本書を読んで、読者は拍子抜けすることと思う。
特に劇的な動機があった訳ではなく、著者は、何とも自然な流れで、抵抗感もほどほどに、決断をしているのである。
「決断」などという表現が大げさなくらいである。
もっとも、この点は、逆に考えさせられる。
人間行動は「認識→判断→行動」等の単純な図式で説明されることがある。
そして、それぞれの過程について合理的な理由がないと、当該行動の説明として腑に落ちないということになりがちである。
しかし、人間行動とは、それほど単純、合理的なものではなく、複雑不合理なものであることを改めて実感した次第である。