まず、形式面として、インタビューで形式であるものの、話が逸れないため、散漫な印象はない。
問答、口頭による説明という理解を助ける利点を享受できる。
本書で、コンパクトながら、木村氏の思想上の各重要問題に関する考えを明確に理解できる。
もっとも、本書は若干古いので、木村氏の考えの核を掴む目的で読むこととなる。
・・・今までの左翼的な史観で牛耳られたところからのみ脱却することを、戦後レジームに向かっての第一歩だと、右翼は評価してしまうのです。
じつはそれは埋め合わせにしか過ぎないという原理主義者と、いや埋め合わせは左翼史観を解体しているんだと看なしてしまっている人たちもいる。
錯覚なんですよ。
主敵をはぐらかせている構造なのです。
これをくっきり出せればいいわけです。24頁
自らの考えを形成するためには、本質からの考察が不可欠である。
木村氏の指摘は、相手方の排除によってしか自己規定できないとすれば、それは脆い思想、あるいは、思想ですらないという警鐘である。