友情を哲学する
七人の哲学者たちの友情観
戸谷洋志
光文社新書
2023年
本書は、タイトルのとおり、7人の哲学者の友情に関する言説をとりあげる。
各考察の当てはめとして、漫画の一場面が援用されており、理解を助ける。
とりあげられている漫画は以下のとおりである。
『ONE PIECE』
『キングダム』
『HUNTER×HUNTER』
『NARUTO ーナルトー』
『3月のライオン』
『君に届け』
『青のフラッグ』
『タコピーの原罪』
なお、正直に告白すると、上記一覧の中に私が愛読した漫画は1作品も含まれていない。
本書では、友情、あるいは、さらに敷衍して、人間関係に起因する「生きづらさ」の本質が言語化されている。
人間関係、人間の感情の矛盾を理解することは、より望ましい人間関係を築く助けになるかもしれない。
本書でも示唆されているとおり、人間関係、人間の感情はコントロール不可能な領域を擁している。
この限界を理解し、ある種の諦めを持つことで救われることもあると思う次第である。
本書は、哲学者の友情に関する考察をとりあげるという若干珍しい切り口の本である。
このような内容となったことは、著者の属性と無関係ではないように思える。
すなわち、著者は、哲学研究者であり、大学の教員である。
本書でも時折、学生との関わりを例に挙げて友情を説明する場面が出てくる。
学生という、まだ純化された友情があり得る者との接触が著者の哲学的学識を刺激した結果として産み落とされたのが本書なのかもしれない。