芥正彦他
2000年
1 概要
2 感想
「今回の討論は、長時間にわたりほとんど打ち合わせなしで行われた」(254頁)という性質上、やむを得ない側面はあるが、議論が拡散し、議論の目的、論旨は明瞭とは言い難い。
橋爪大三郎氏の交通整理がなかったら、議論はさらに錯綜していたことが想定される。
そのような性質の座談の中、木村修氏の取り組みには意外性があった。
・・・後から三島さんが何を言ったかというのをね、ああいう形で死なれてから自分自身で読み返してみて、言った言葉の意味をもう一回掘り崩す、探してみるという作業を実は僕は十年間ぐらい続けてたけども。(63頁)
三島由紀夫との接点及びその近接した時点での自決に思うところがあったのだろう。
このような内容のものをいま、出版することの意味が私には読み切れない。また、若い世代の読者に、どのように映ずるかもわからない(254頁)。
私自身も、浅学非才が根本原因ではあるものの、やはり、本書の座談で交わされる観念語の応酬を理解した上で、切実な問題として受け取ることはできなかった。
その熱情を表現するために適切な言葉は、観念語の羅列ではなかったのではないだろうか。