ユーモアは最強の武器である
ジェニファー・アーカー、ナオミ・バグドナス著
神崎朗子訳
2022年
本書は、序盤の章でユーモアの効能を説いた上で、ユーモアの仕組みを解体する。
あらゆるユーモアの核心には、事実にある。109
社会科学ではこの原則を「不調和解消理論」によって説明する。つまりユーモアは、予想と実際に起こったできごとの不調和から生じるということだ。110頁
序盤の基礎的な説明に続き、その後の章では、ユーモアを仕事に持ち込むことなどを説く。
ここでは、具体的実践的内容も含まれており、ユーモアを発揮することは才能による曲芸でないことを理解できる。
・・・手紙を受け取った相手は、追伸の文を読んで第一印象を抱くということだ。じつはメールでも同様なのだ。・・・というわけで、追伸は真面目になりがちなメールの文章に、ちょっぴり陽気さを加えるのに効果的なのだ。166頁
ただし、本書は、単なるマニュアル本ではない。
大袈裟に表現すれば、仕事哲学、人生哲学の本とでもいえようか。
そのため、本書の内容を技術的に用いるのみでは不十分であるように思える。
ユーモアは選択だ。選択をするためには自分の人生をしっかりと見つめ、まわりの人たちの声に耳を傾け、「いま、この瞬間」を味わう必要がある。352頁
機械的なやり取りで素通りされるコミュニケーションの中に、少しの遊び心を盛り込む意識を持つことで、仕事や生活は大きく変わるかもしれない。
本書には、そんな大それた希望すら抱かせる魅力と説得力がある。