一見奇をてらったタイトルに見える「読む・打つ・書く」は、「読書論・書評論・執筆論」を意味する。
理系研究者による読書論・書評論・執筆論のエッセイであり、著者もあとがきで自負するように類書は少ないと思われる。
本書は、ひとりの研究者がどのように本を読み、書評を打ち、著書を書いてきたかの、一般論ではなく、できるだけ具体的な自分自身の経験に基づく考察である。
私が知る限り、いわゆる“理系”の研究分野で、読書論・書評論・執筆論をまとめて論じた本は他に心当たりがない。
314頁
著者は、本書において、「一貫して利己主義を標榜してきた」と述べる(314頁)。
しかし、本書は、手堅い記述の中に時折ユーモアが同居する魅力的な文章で、利己主義を超えて他者への娯楽を提供していることは明らかである。
また、本書が、知的生産者に対して、多くの示唆を含んんでいることも明白である。
「読む・打つ・書く」の実践について、私はことこまかに手順を書いたところがある。
しかし、みなさんに無理難題を押しつけるつもりはさらさらない。
たとえば本を書こうとするならば、唯一たいせつな点は「飽くことなく毎日続けること」だ。
315頁