基礎から分かる論文の書き方
2022年
本書は、新書でありタイトルも軽い。
それゆえ、多くの者は、本書を見て、学部生向けの卒論作成のマニュアル本といった第一印象を抱くだろう。
しかし、本書を眺めていると、すぐに異変に気付く。
新書でありながら500頁弱もあり、新書らしからぬ分厚さとなっている。
中身を一瞥すると、脚註が多くあり、文献リストも備えられている硬派な体裁である。
本書から滲み出ている以上の特異性のとおり、本書は、単に論文作成の形式的な作法を説明するマニュアル本ではない。
なおこの本は、いま主流になっている「論文の書き方」を相対化する視点も含んでいます。具体的には、科学史の知見や、論文型式の歴史などにも言及しながら、社会的な枠組みとしての「論文の書き方」がどのような理由と経緯で構築されてきたのかも検討しています。そして、さまざまな学問体系disciplineの枠組みを比較しながら、そこで共有されている「論文の書き方」が分かれていることにも言及しています。(9頁)
タイトルのとおり論文の基礎論として有用であることはもちろんのこと、読み物としても面白い。
論文作成を超えて、より一般的に「人を説得する技法」を考える契機を与えてくれる。