インターネットポルノ中毒 やめられない脳と中毒の科学
ゲーリー・ウィルソン著
山形浩生訳
DU BOOKS
2021年
1 概要
インターネットポルノが及ぼす悪影響を説明する。
ポルノ断ちのための具体的な方策も紹介する。
2 コメント
本書でとりあげられている、脳機能の説明及びポルノが及ぼす悪影響、ポルノの特質の説明からすると、ポルノ依存症が一つの深刻な依存症の形態であることは、一定の説得力を持つ。
もっとも、著者自身も、ポルノの影響を評価するために実施された、ポルノ利用を除去する研究の数が不足していること(38~40頁)、症状の原因がポルノであるか判定しづらいという性質研究の難しさ(41~42頁)等について言及しており、今後の研究の進展が期待される。
本書の結びでは、新たなポルノの形態であるVRに言及し、警鐘を鳴らしている。
この点をさらに敷衍すると、今後の技術の発展により、さらに刺激の強いポルノの形態が誕生することが容易に想定される。
これにより、今後、ポルノ依存症がひとつの社会問題として勃興する可能性は否定できない(本書の仮設が正しい場合)。
そして、規制を設ける場合にはその設計は容易ではない。
インターネットポルノは、深刻な社会問題として発火することを待つ火薬庫なのかもしれない。