1 形式面
2 とりあえず本書の内容を把握しておくことの重要性
3 類書より優れている点を敢えて挙げると
4 抽象的言説
5 頭を生産的思考で満たせ
6 その他
------------------------------------------------------------------
おすすめ ★
近代ゴリラレベル ★
------------------------------------------------------------------
1 形式面
まず、形式面に苦言を呈することからはじめる。
本書の前置きはあまりにも長い。
上巻の120頁ほどが前置きである。
また、プログラムの紹介本という性質上やむを得ないのかもしれないが、プログラムへの誘導が何度も何度も出てきてうるさい。
2 とりあえず本書の内容を把握しておくことの重要性
ジャーナリストの立花隆氏は「教養は解毒剤になる」と喝破した。
これは、時の経過という考証に耐えた知識を有することによって、いかがわしい言説を見抜くことができることを意味する。
本書は、世界的に売れた本であり、本書について言及される場面も多い。
そのため、本書の内容を知っておくことで、本書を引用した言説を冷静に分析することが可能になる。
これは、教養が解毒剤として作用するのに類似している。
3 類書より優れている点を敢えて挙げると
一般に自己啓発書は、動機づけを与える。
しかし、かかる動機、意識は時の経過によって消失する運命にある。
そのため、自己啓発書は一時の爽快感を与えるものの、根本的な自己改革にはつながらないことが通例であるように思える。
一方で本書は、上述の自己啓発書の弱点を心得ている点では類書より優れていると言えるかもしれない。
すなわち、本書は、意識の消失を回避すべく、繰り返し読むこと、内容を紙に書いて見返すこと、生じた意識を行動という具体的形象に転質させることを推奨している。
4 抽象的言説
全体として、本書は提言内容が抽象的でありつかみどころがない点は否定できないだろう。
個人的な嗜好かもしれないが、私は、反証が不可能な抽象的な言説を断定的に論じる本が好きではない。
5 頭を生産的思考で満たせ
人間は考える葦である。
思考こそが人間と他の動物を区別する本質的要素とも考えられる。
しかし、思考は常に生産的なものとは限らない。
時として、マイナス思考に頭を占領されたりする。
時として、取るに足らない雑念に思いを巡らせたりもする。
そして、思考を巡らすことには労力がかかる。
生産的思考と非生産的思考とで費やす労力が同等であると仮定すると、できる限り生産的思考に脳を占領させるべきであろう。
思考は目に見えないため、非生産的思考による浪費に気付きづらいという側面がある。
そのため、頭を生産的思考で満たせという本書の提言には素直に賛同するものである。
6 その他
本書の原題は『Think and Grow Rich』である。
これに『思考は現実化する』という邦題を与えた編集者あるいは訳者のセンスには脱帽である。
また、本書は、様々な分野での成功者から抽出し体系化した成功哲学という触れ込みである。
類似のコンセプトの本として、古今東西の思想の要素から最大公約数として「勤倹・貯蓄、正直・中庸、感謝・報恩」を抽出し解説した『「修身」のすすめ』がある。
『思考は現実化する』と比較すると、オラオラ系ではなく、落ち着いた良識派の雰囲気がある。
なお、著者の竹内均氏は地球物理学の権威である。
「修身」すすめ 竹内均著
------------------------------------------------------------------
おすすめ ★★★★
近代ゴリラレベル ★★★
------------------------------------------------------------------