デイル・ドーテン著
野津智子訳
1 概要
飛行機が欠航になり、空港に寝泊まりを強いられた男が、そこで出会った老人に仕事哲学について学ぶ対話篇である。
2 コメント
そして、タイトルである「仕事は楽しいかね?」という素朴な疑問に対して、肯定的な回答ができるようになるための仕事哲学を老人が伝授するのが本書である。
仕事哲学の内容は、抽象的にまとめると、「考え方」と「工夫」といったところだろうか。
細かいトピックや逸話は多数に及ぶが、割愛する。
中でも重要だと思われる、偶然の扱い方に関するトピックをとりあげたい。
大ざっぱに説明すると、新たなアイデアや新たな試みは偶然を起点としてることが多い一方で、起点となり得る偶然がスルーされることの方が圧倒的に多いことが指摘されている。
そして、自ら、従来の行動様式に変化を加え、偶然を作りにいくことも指摘されている。
これはどういうことか。
例えば、卑近な例で考えれば、いつもの慣れ親しんだ道があったとする。
あえて、別の小道を通ってみる。
ふと、飲み屋が目に入る。
せっかくなので、その店に入ってみる。
カウンターには先客がいて、その方と会話をする。
会話が盛り上がり、名刺交換をする。
後日、連絡があり、ビジネスにつながる。
以上の例では、いつもの慣れ親しんだ道ではなく、あえて別の小道を通ってみたことにより、偶然、店が目に入り、それを起点として新たな人物との出会いにつながっている。
本書で紹介されている逸話と比較するとあまりにスケールの小さい話であるが、方向性は同一であろう。
同氏は、「私は、毎日、昨日と違うことをしています。もちろん、今日も昨日と違うことをしています。」と発言していた。
本書は対話篇である。
この形式は文字で読むには多少冗長かもしれない。
一方で、耳で聴くには適していると感じた(私は耳で聴いた。)。