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近代ゴリラレベル ?
1 難解な小説
2 安部公房について
3 残ったのは無力感
1 難解な小説
「難解な小説」には二つのパターンが思い浮かぶ。
一つは、記述が重厚に装飾されており、文章自体を読むことが難しい場合である。
いま一つは、記述自体は平易だが、その含意を読み取ることが困難な場合である。
本作品は後者の意味で、難解な小説である。
本作品は章ごとに場面が展開する。
記述者と被記述者の倒錯、あるいは、認識者と被認識者など手の込んだ構成となっている。
もっとも、場面の展開によりミステリー小説のような分かりやすい伏線回収がなされるわけではない。
全体の構成は秩序だっているのか。
あるいは、計算された無秩序か。
2 安部公房について
安部公房は、東大医学部を卒業している。
また、彼は、当時では珍しくワープロを使用して原稿を執筆していた。
遺作原稿がフロッピーに保存されていたというエピソードもあり、先鋭的な面を有していた。
この異色の人物像は作風に反映しているように思える。
3 残ったのは無力感
上述の通り、本作品は私にとって非常に難解であった。
特に理解不能だったのが、作中でコメントと共に掲載された写真である。
種々の写真が掲載されているが、私はこれらの写真の意味を一つも理解できなかった。
読後、謎が解明されることはなく、残ったのは、「『箱男』を読み終えた」という事実と圧倒的な無力感である。
文学的素養のある方に本作品の解題をお願いしたいものである。