近代ゴリラの読書感想文

元予備役。司法試験合格。国家総合職試験合格。

 近代ゴリラ=インテリジェントゲリラ

【読書感想文】箱男 安部公房

おすすめ ★
近代ゴリラレベル ?
箱男 (新潮文庫)

箱男 (新潮文庫)

 

 1 難解な小説

2 安部公房について
3 残ったのは無力感
 
 
1 難解な小説
 「難解な小説」には二つのパターンが思い浮かぶ。
 一つは、記述が重厚に装飾されており、文章自体を読むことが難しい場合である。
 いま一つは、記述自体は平易だが、その含意を読み取ることが困難な場合である。
 
 本作品は後者の意味で、難解な小説である。
 
 本作品は章ごとに場面が展開する。
 記述者と被記述者の倒錯、あるいは、認識者と被認識者など手の込んだ構成となっている。
 もっとも、場面の展開によりミステリー小説のような分かりやすい伏線回収がなされるわけではない。
 全体の構成は秩序だっているのか。
 あるいは、計算された無秩序か。
 
 
2 安部公房について
 安部公房は、東大医学部を卒業している。
 また、彼は、当時では珍しくワープロを使用して原稿を執筆していた。
 遺作原稿がフロッピーに保存されていたというエピソードもあり、先鋭的な面を有していた。
 この異色の人物像は作風に反映しているように思える。
 
 
3 残ったのは無力感
 上述の通り、本作品は私にとって非常に難解であった。
 
 特に理解不能だったのが、作中でコメントと共に掲載された写真である。
 種々の写真が掲載されているが、私はこれらの写真の意味を一つも理解できなかった。
 
 読後、謎が解明されることはなく、残ったのは、「『箱男』を読み終えた」という事実と圧倒的な無力感である。
 
 文学的素養のある方に本作品の解題をお願いしたいものである。