近代ゴリラの読書感想文

元予備役。司法試験合格。国家総合職試験合格。

 近代ゴリラ=インテリジェントゲリラ

【読書感想文】孤独のチカラ 斎藤孝

おすすめ ★★

近代ゴリラレベル ★★

孤独のチカラ (新潮文庫)

孤独のチカラ (新潮文庫)

 

 

1 まず思ったこと
2 孤独への思い入れの強さ
3 元くらいはとれたか
4 蛇足


1 まず思ったこと
 本書で示された「孤独の技法」はどれも予測可能な内容であり、目から鱗が落ちることはなかった。
 なお、具体的(具体的といいつつ多分に抽象的であるが)な内容は以下の三つである。

①内観する
②教養という反射鏡を持つ
③<日記>を書く

 上記の孤独の技法に関して、私はそれほど興味をかき立てられなかった。
 一方で、著者の孤独時代の具体的なエピソードには妙な説得力があり、面白く読めた。

 

2 孤独への思い入れの強さ
 著者の孤独への思い入れが強すぎる。
 それゆえ、多少筆が滑っているという印象を受ける。
 例えば、途中の文豪、作品の紹介とそれに対する評価は、恣意的断定的に暴走しているようにすら思える。

 しかし、私は、このことを批判している訳ではない。
 私の従前の斎藤氏に対する印象は、失礼な表現になってしまうが、「偽善的な笑いを浮かべる理知的な人」であった。
 一方で、本書で同氏が見せた情念的傾向は、私が従来有していた同氏の印象とはかけ離れたもので、新鮮であった。

 

3 元くらいはとれたか
 著者は、一定の孤独の時間が生産性につながると指摘する。
 この指摘はもっともであろう。
 本棚に収められた本書の背表紙を見ることが、孤独の必要性に対する備忘になるのであれば、元(本書の費用+本書を読むのに費やした時間)くらいはとれただろう。

 

4 蛇足
 蛇足になるが、本書のタイトルは上記の通り、『孤独のチカラ』である。
 「チカラ」というカタカナ表記は本書のタイトルに限らず頻繁に目にする。
 なぜ、敢えてカタカナ表記にするのか。
 ナゾである。
(今、特に意識せず、「ナゾ」とカタカナ表記をした。
「チカラ」も特に意味も無く、感覚的にカタカナ表記になっているだけかもしれない。)。