読書家の新技術
1987年
1 概要
呉氏の初期の著作である。
タイトルのとおり読書に関する技術を紹介する。
第1部知の篇では読書や知について総論的な解説をする。
第2部技術篇では具体的なノウハウを解説する。
第3部ガイド篇はブックガイドである。
なお、第3部ガイド篇は、古さは否めない。
しかし、古典が多く紹介されているため、現在でも参考になる部分はある。
「規制の近代教養の体系に依拠して思考することを拒否し、規制教養を解体しつつ自分の武器にすることにつとめてきた」(87頁)呉氏が、独特の技術を開陳する。
2 コメント
本書を執筆した当時30歳半ばであった呉氏が公開した、知的武装の術である。
碩学でなくても、適切な問題意識を持ち、適切に読書をし、適切に知識を実装すれば、明晰な思考は可能であると説くものである。
本書に通底する姿勢は、とにかく実践を意識した、雑草魂に基づくゲリラ的な読書のすすめである(呉氏も「知的ゲリラ」という表現を用いている。)。
助言はいずれも端的で的確である。
報道については、後に埋もれてしまうような小さな記事にこそ注目するように強調する(176頁)。
そして、話題は本の保存方法にまで及ぶ(181頁)。
本は積み上げず、たてに並べる。
積むと、下にある本を無精して取らなくなるし、本が痛む。
この記述は経験的に納得できるのではないだろうか。
本書では、技術の進歩により、現在においては陳腐化してしまった話題も多い。
しかし、現代の技術に置き換えて考えれば大いに参考になる。
例えば、「本を吸収する」(159頁~)で紹介されている読書カードによる整理方法は、考え方をそのままEvernoteなどに移植すればよい。