近代ゴリラの読書感想文

元予備役。司法試験合格。国家総合職試験合格。

 近代ゴリラ=インテリジェントゲリラ

【読書感想文】封建主義者かく語りき

封建主義者かく語りき
1996年

封建主義者かく語りき (双葉文庫)

 
 
1 概要
 評論家宮崎哲弥氏が師と仰ぐ評論家、呉智英氏のデビュー作である。
 呉氏は、デビュー作である本作で、民主主義を批判する立場として封建主義者宣言をする。
 
2 コメント
 呉氏の評論において、基本的な姿勢はデビュー作である本作から一貫している。
 具体的には、「常識」、固定観念、大衆、偽善など表層的なものをユーモアをまとった筆致で斬るという姿勢である。
 
 本書で、呉氏は、封建主義という概念が民主主義のネガの表現として用いられていると喝破する。
 つまり、民主主義を良きものとして位置付け、非民主主義的な悪しきものを封建主義的と形容するということである。
 しかし、呉氏は、民主主義は無規定に良いものであるとはいえず、それに伴い、民主主義のネガである封建主義が輝きを放つという図式を提示する。
 
 単なる民主主義批判という形を越えて、封建主義という旗をたてたところに呉氏の戦略の巧みさが光る。
 呉氏が封建主義者という旗をたてずに、単に民主主義のイデオロギー性を批判したとしても、数ある類似の言説の中に埋没していた可能性がある。
 
 やはり、概念化は、自らの考えを伝える上で重要である。
 このこの点については以前述べたとおりである。
 
 
 最近ふと思い立って、呉氏の作品を久しぶりにまとめて読んでみたのだが、勇み足により、デビュー作である本作より先に『大衆食堂の人々』を紹介してしまった。
 
 
 最近読んだ作品は以下のとおりである。
 どの作品でも、上述の基本姿勢は一貫している(それゆえ、多少の重複は存在する。)。
 
・読書家の新技術(朝日文庫 1987年)
・封建主義者かく語りき(双葉文庫 1996年)
・大衆食堂の人々(双葉文庫 1996年)
・サルの正義(双葉文庫 1996年)
・バカにつける薬(双葉文庫 1996年)
・現代マンガの全体像(双葉文庫 1997年)
・知の収穫(双葉文庫 1997年)
・言葉につける薬(双葉文庫 1998年)
・賢者の誘惑(双葉文庫 1998年)
・危険な思想家(双葉文庫 2000年)
・ホントの話 誰も知らなかった現代社会学(小学館文庫 2003年)
・現代人の論語ちくま文庫 2015年)