幸福なる人生
中村天風「心身統一法」講演録
PHP研究所
2011年
1 概要
中村天風の心身統一法に関する複数の講演録である。
2 感想
(1) 総論と各論
本書の内容は、難解な哲学が展開さいれているわけではなく、字面を表面的に理解することは容易である。
もっとも、字面を表面的に理解することと、本質を体得することとの間には懸隔があるように思える。
本書で示される「心身の統一」という総論は、明快である。
一方で、具体的方法論を教示する各論はそれほど多く示されていない。
ただし、本書でも、各論として、やたらと具体的な教示もある。
・寝際に考えごとをしないこと(130頁)
・「言葉に常に注意深く、どんなことがあっても消極的な言葉を出さないように、日常の生活を営む際、自分の言葉を自分自身が取り締まっていかなければならない」(140頁)
・「人生に生きる刹那刹那、些細な仕事をするときでも、重大な仕事をするときでも、その仕事に対して自分が今どんな気持ちを持っているかを自分で検査するんです」(161頁)
・何をおいてもとりあえず、まず尻の穴を締めろ(210頁)
・注意深く、息を少し長く穏やかにする(214頁)
(2) 講談『山岡鉄舟』
途中、講談『山岡鉄舟』が披露されるが、中村天風が、自らハードルを上げてから披露されているだけあって興味深い内容である(243頁〜)。
(3) 食事法
本書では、食事法についても言及がある。
例えば、動物性タンパクは消化する際に尿酸が生じるので、よくないと説く(265頁)。
私としては、これにより動物性タンパクの摂取をやめようとは思わないが、動物性タンパクを摂取する際には、アルカリ性食品である野菜をより多く食べようとは思った。
プラスの観点から食べ物を選ぶという考えが強く、マイナス面を抑えるという意識は希薄であったため、意識改善の契機にはなった。