コンサル一〇〇年史
並木裕太著
ディスカバー・トゥエンティワン
2015年
1 概要
曖昧な「コンサル」という概念の案内図である。
2 コメント
著者は、はしがきで「コンサル」と自称する者の増加を指摘する。
その中で、「経営コンサル」については、その他のコンサルから一線を画した特異性があると指摘する(当然、著者のポジショントークも込みである)。
その上で、「結局のところコンサルとは何なのか」という問いに対して解を与えるため、経営コンサルの歴史を示す。
経営コンサルの歴史では、著者は、コンサルティングファームを「戦略系」、「会計事務所系(監査法人系)」、「IT系」に分類し、各類型のファームの特徴とこれまでの盛衰を示す。
歴史の大局として、法規制がビジネスに及ぼす影響は大きく、規制が変わると業界の勢力図が塗り変わることが興味深い(88頁~)。
法律上一部だけできないというものに対して、いろいろな人が神経を尖らせています。実際は監査人という独立性に影響しないアドバイザリーを提案するときでも、あのクライアントはオーディットクライアント(監査顧客)だから結局ダメだよね、というリスク回避のほうに意思決定することは多い。"微妙だからやめよう"という心理が働きますからね (123頁)
本書の後半には、著者自身の就職面接の再現、コンサルの典型的な一週間の紹介など俗的なエンターテイメントを提供する部分もある。
私は、そのとき、心の中で思った。
歴史紹介で概念理解を深め、後半では俗的なエンターテイメント要素も盛り込んでいる本書は、入門書としてバランスが良い一冊と思う。