エフォートレス思考 努力を最小化して成果を最大化する
グレッグ・マキューン著
高橋璃子訳
かんき出版
2021年
『エッセンシャル思考』の続編である。
前著との位置付けについては明確である。
エッセンシャル思考は、「何を」やるかを教えてくれた。
エフォートレス思考は、「どのように」やるかを極める技術だ。25頁
PART1では、「エフォートレスな精神」について紹介する。
PART1の第2章までの内容は、総論という性質上、どこかぼんやりとしている。
第2章までの内容を総括すれば、成果を出すために、より簡単なやり方、楽しいやり方を探求する、ことに尽きるだろう。
頭の中の不要品を手放す(第3章)、「休み」で脳をリセットする(第4章)は、「空白」の重要性に焦点を当てる。
これらに続く第5章は、今この瞬間にフォーカスする。
近年、この類いの本では、必ずといっていいほど言及されるお決まりの内容である。
PART2では、「エフォートレスな行動」について説明する。
私はいつも、コストとリターンが逆転するちょうど手前を「完成」と定めている。
時間と努力を無駄にしないためにも、「完成」のイメージを明確に定義し、そこにたどり着いたら潔く終わりにしよう。139頁
この指摘は極めて重要である。
当たり前のことではあるが、つい成果物に対する思い入れが強くなると忘れがちになる事項である。
やろうと思えば、無限に修正点が出てくるようにも思える。
そして、大局に影響しない微修正を繰り返すこととなる。
また、とにかくまずは着手してしまうことの重要性が説かれている。
面倒で気が重い作業ほど後回しになりがちというのが人間心理である。
このような面倒で気が重い作業へ対峙する方法を紹介する。
具体的には、
手順を限界まで減らし、とにかく最初の一歩を踏み出すこと(154から156頁)、「ゴミから始める」(なんでも最初は醜い付格好なものであることを理解し、序盤の完璧主義を捨てること。171から174頁)、
「ゴミから始める」の各論としての「ゼロドラフト」のアプローチ(177から179頁)
などである。
PART3の「エフォートレスのしくみ化」については、ゴリゴリのハウトゥーと思いきや、思考法についても言及しており、タイトルから想像したよりは面白い内容であった。
「あなたがたくさんの本を読み、たくさんの賢い人を雇い、彼らの知識を吸収していることは知っています。
ですが、あなたは世界中の誰よりも多くの知識を頭に詰め込む方法を知っているように見えます。
その秘訣は何ですか?」
すると、マスクはこう答えた。
「知識を一種のセマンティック・ツリー(意味の木)として捉えることが重要です。
そして枝葉・詳細を見る前に、まず幹や大きな枝、つまり土台となる原理を理解しておくんです。
そうしないと枝葉をつなぎとめるものがありませんから」(210から211頁)。
これは、『RANGE』で紹介されていた、構造を見抜く思考様式と同様の指摘である。
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ジョンは机の引き出しを開けた。
ペンを取りだし、引き出しを閉めようとするが、なかなか閉まらない。
そこで、いつものように引き出しを全力で開けて、ガタガタ振って、また閉めてを繰り返してみた。・・・2人で調べてみた結果、鉛筆立てが中で引っかかっていたことがわかった。
いつから調子が悪かったのか、ディーンがたずねると、「2年前から」とジョンは答えた。
「2年間、毎日これでイライラしていたんですよ」
それを解決するのにどれくらいの時間がかかったか?
ほんの2分だ(255から256頁)。
なお、個人的には、何よりも、シンプルに本質を表現した表紙のイラストが、前著及び本書が読者に魅力的に映るための極めて大きな要素となっていると考えている。
これに類するイラストを他の本の表紙でもよく見かけるようになった。