戦略読書
2015年
『戦略読書』と題する本書を手に取る読者の関心は、読書により効率的に情報を取り込む方法論を知ることにあると思われる。
この読者の関心に応えるように、本書では、以下の等式を念頭に、一定の読書戦略が示される。
読書生産性=読書から得られるもの(リターン)÷かかった時間や手間(コスト)
例えば、第3章「発見型読書法-5つの視点で5倍読み取る読め方革命」(192~244頁)では、具体的な読書方法の指南がある。
要素は以下のとおりである。
①反常識
②数字
③対比
④一段深く
⑤抽象化
なお、「読め方」というのは著者の造語であり、一定の意味が込められている(192頁)。
もっとも、上記戦略部分と同等か、あるいは、それを上回る熱量で書かれている「楽章」というパートがある。
「楽章」という章名からすると、本論の狭間にある箸休めとの印象を受けるが、明らかに趣が異なる。
生き生きとした筆致で相当の紙幅が割かれている。
「楽章1 ボクたちは読んだものでできている-私的読書全史」
「楽章2 みんなと同じ本ばかり読んではいけない-オリジナリティを育てる珠玉の12冊」
私は、この「楽章」の部分を読んで、この著者は「戦略読書」を呼び水を使った上で、読書好きとして読書の魅力を伝えることを真の「戦略」としているように思えた。
この感想は、あとがきで裏付けられることとなる。
この本はのコアはでも、戦略そのものではなくて(!?)読書の価値・本の面白さを伝えることにあります。だから、読むのはどこからでもいいのです。目次を眺めて、読みたいところからどうぞ。この本は本好きのための、そして本好きをつくるための本なのですから。368頁