上野久徳伝 陸軍参謀から企業再建弁護士へ
加藤恭子ノンフィクション・グループ著
三省堂
2007年
1 概要
書名のとおり、陸軍参謀から企業再建弁護士となった上野久徳弁護士の評伝である。
2 感想
私は上野弁護士の存在を知らずに、偶然本書にたどり着いた。
評伝としてとりあげられるだけあって、ひと癖もふた癖もある人物である。
陸軍のエリートであっただけあって、折り紙付きの知性であったようである。
お目出度の兆候をみた妻をみて、家を持つ責任を感じ、必死に頑張り、食卓へも手洗いへも六法を傍らに置きすさまじい勉強をした。
その結果、二十三年には大学二年生ですでに司法試験に合格、三年後には上京して弁護士を開業するという、獅子奮迅の回生を行ったところが上野の面目躍如である。(13頁)
また、本書では、随所で、上野弁護士が、大局を正確に把握した上で、要点をつかむことが抜群にうまかったことが、繰り返し強調されている。
その大局をつかむということに、上野先生は長けていたと思います。
この事件で何がいちばん重要なのか、重要性のプライオリティの判断もすぐれていたし、その重要なものを達成するための手段の選択も素晴らしかった。
事件の途中でも、勘所をつかまえるのがうまい先生でした。
非常に頭のいい方なので、巧みに勘所をつかむ。
やはり、参謀養成の訓練の影響が大きかったのでしょう。(229~230頁)
本書作成の取材の過程で以下のようなやり取りがあったそうである。
だが体調不良のため取材はできなかった。
前回、「この次は、参謀の教育が弁護士生活にどのように役に立ったか、ということを話しましょう。
まだ、誰にも話していないことだ」と言われていたのに、だった。(294~295頁)
この部分を読むことができなかったのは残念である