近代ゴリラの読書感想文

元予備役。司法試験合格。国家総合職試験合格。

 近代ゴリラ=インテリジェントゲリラ

【読書感想文】夜の森で遭遇した挙動不審なおっちゃん(=自己超越の契機)

Awe Effect
人生に喜びをもたらす「Awe体験」の効果
カトリーン・サンドバリ、サラハンマルクランツ著
喜多代恵理子訳
サンマーク出版
2023年

 

Awe Effect

 

 本書の表紙の写真を見た際には、自然に触れることの効能を説く内容を想像した。
 しかし、本書の対象はもう少し広かった。

 本書が解説する「Awe」の定義は以下のとおりである。

 

 果てしないものや理解を超えるものが生み出す壮大さに対する感情であり、私たちが新しい情報を通して、自分あるいはまわりの世界に対する(それまでの)理解を変える必要があるときに、私たちのなかで起こる「精神的な変化の過程」でもある・・・。38頁

 

 この定義のとおり、Aweを引き起こす対象は、自然に限られない。
 本書では、損得勘定を超えた人間、音楽、文化、共同体などが、Awe体験を引き起こす例として挙げらている。
 
 Aweを引き起こす対象が、自らの理解を超えるものである以上、本書で紹介されている具体例は壮大なスケールなものが多い。

 一方で、日々の中で直面し得るAweの例も紹介されており、自らの視野狭窄を破壊するための鍵は、意外に身近なところに転がっていることも確認できる。

 

 本書で紹介されている日々の実践のうち、私は、夜に森の小道を散歩することを実践してみた。
 この実践は、途中までは順調であった。
 しかし、薄暗い小道で挙動不審なおっちゃんと遭遇したことで事態は一変した。
 森の小道は、街灯もなく、物騒なのである。

 もっとも、少し思いを巡らすと、このおっちゃんとの遭遇こそが、思いもよらぬAwe体験であったのかもしれない。