近代ゴリラの読書感想文

元予備役。司法試験合格。国家総合職試験合格。

 近代ゴリラ=インテリジェントゲリラ

【読書感想文】死ぬほど読書

死ぬほど読書

丹羽宇一郎

幻冬舎新書

死ぬほど読書 (幻冬舎新書)

 

おすすめ ★★★

近代ゴリラレベル ★★★

 

1 読書はしないといけないのか?

2 多読か精読か

3 習得の技法

4 垣間見える合理性と通奏低音としての品性

 

 

1 読書はしないといけないのか?
 本書は、「読書はしないといけないものなのか?」と問うた学生の投書を取り上げることから幕を開ける。
 この疑問に対する著者の回答は明快である。
 「本を読みたい者は読めばいいし、読みたくない者は読まなければいい」である。
 この点に関しては、私も全く同感である。
 
 上記回答を前提として、著者自身は、読書の恩恵を見いだしてきたと続ける。
 現に、著者は、伊藤忠商事社長等を歴任している、ビジネスパーソンとしては、いわば成功者に分類される人物である。
 これは読書家の一形態として参考になると思う。
 
 
2 多読か精読か
 著者は、本をどのように読み、自分なりに咀嚼できているかが重要であり、読んだ本の冊数にこだわる必要はないと説く。
 その上で、以下の具体的な数字を提示している。
 
 以前は週に3冊くらいの割合で、年間150冊ほど読んでいました。(105頁)
 
 この数字は本を精読するスタイルの読書の参考になるだろう。
 
 
3 習得の技法
 著者は、ゴルフの上達の方法として、理論書だけでシングルプレーヤーになったという。
 徹底的に理論を頭にたたき込み、その上で、打ち方を頭の中の理論と照合、修正することで上達する。
 この方法には向き不向きがあると思われるが、習得の技法の一形態として面白いと思った。
 なお、習得の技法に関しては、以前紹介した『習得への情熱』も秀逸である。
 
 
4 垣間見える合理性と通奏低音としての品性
 著者にはビジネスパーソンとしての合理性を垣間見る。
 例えば、マルクスの『資本論』、西田哲学については、難解で最後まで読めなかったと告白している。
 それにとどまらず、難解な表現はその著者に問題がある可能性も考えるべきであるとし、平易な表現の重要性を説いている。
 難解な表現が意味のある難解さか、という視点は重要であると思う。
 
 このように実利的な側面が顔をのぞかせつつも、全体としてはオラオラ系ではなく、知識人としての高貴な風格が漂っている。
 
私が考える教養の条件は、「自分が知らないということを知っている」ことと、「相手の立場に立ってものごとが考えられる」ことの2つです。(41頁)
 

 

 
 
 
備忘
(頁)
22 情報のクオリティを見抜く。現地へ行くことの重要性 by瀬島龍三
57 本のタイトルは、商業的な観点から練りに練られているため、あまりあてにしない。→本書『死ぬほど読書』にもあてはまるだろう。タイトルと内容には少しギャップがある。
75 定期で購読している雑誌は『文藝春秋』と『週刊エコノミスト』。世間の興味関心を知ることができる。
83 「なぜ?」「どうして?」と考えながら読む。
100 読者は無償のものである。ピアニスト辻井さん「いえ、全然疲れてません。だって楽しいんですから。」
124 苦手な本の読み方=仕方なく読んでいるという気持ちを捨て、仕事を成功させるために読んでいると思えばいい。
147 一つでも心に刻まれる言葉があれば儲けもの。
162 スランプに陥る人の特徴=自己評価が高い。調子が悪いことも含めて自分の本来の実力だと思えば、スランプなどない。