1 タイトルの過激さ、内容の堅実さ
2 コラム
(1)獄中でする読書
(2)「速読」と「精読」の方法と、本の読み方について
(3)本の内容を記憶する方法
(4)知識はどのように活用すればいいか
(5)専門書・学術書を読む時に大切なこと
(6)小説を読む時に大切なこと
(7)自分に合う本の見つけ方
人生を変える読書 無期懲役囚の心を揺さぶった42冊 (廣済堂新書)
- 作者: 美達大和
- 出版社/メーカー: 廣済堂出版
- 発売日: 2015/10/29
- メディア: 新書
- この商品を含むブログ (1件) を見る
1 キャッチコピーの過激さ、内容の堅実さ
本書は、著者の衝撃的な自己紹介によって幕を開ける。
私は美達大和と申します。現在、2件の殺人事件により無期懲役囚として、刑期10年以上の者が収容されるLB級刑務所に服役しています。殺人事件といっても衝動ではなく、計画して実行した確信犯でした。当時、妄想していた歪んだ信条によって決行したのです。(3頁)
タイトルからも明らかなように、本書は、無期懲役囚の手による書評・読書論の本である。
本書は、「無期懲役囚」を強調しているものの、内容は突飛なものではない。
内容は、いたって堅実である。
それゆえ、突飛な内容を求めて本書を手にとった場合には物足りない可能性がある。
2 コラム
上述の通り、本書は、良くも悪くも普通の本である。
基本的に書評がメインであり、読書の技法はコラムで述べられるという体裁になっている。
この読書論・読書の技法に関するコラムはそれなりに興味深い。
コラムは全部で7つある。
①獄中でする読書 52頁
②「速読」と「精読」の方法と、本の読み方について 88頁
③本の内容を記憶する方法 114頁
④知識はどのように活用すればいいか 144頁
⑤専門書・学術書を読む時に大切なこと 174頁
⑥小説を読む時に大切なこと 202頁
⑦自分に合う本の見つけ方 235頁
以下では、それぞれについて簡単に紹介し、コメントする。
アがコラム内容の簡単な紹介である。
イが近代ゴリラのコメントである(ア、イがないものはコラム内容の紹介のみである)。
(1)獄中でする読書
読書は机に向かってする。
これは、ページをめくる速度が早いことと筆記をすることによる。
ゆっくりと読む読書は恐らく生涯不可能である。
「時間=命」という認識で読書に臨んでいる。
(2)「速読」と「精読」の方法と、本の読み方について
ア はじめに、序文・目次・あとがきと全体を見て構成を把握し、速読か精読かを決める。
5W1Hを意識する。
ページ全体を視野に入れ、知りたい部分が浮き上がってくるというイメージで行う。
ストップウォッチを利用し、限られた時間の中でどれくらい読めるかを記録する。
イ 巷では、様々な速読法が跋扈している。
単に私の能力不足なのかもしれないが、基本的に、本に書かれている内容を全て写真のようにスキャンできるという方向性の速読法は眉つばものだと思っている(そのような特殊能力を持った方はいるかも知れないが、速読「法」、速読「術」などと名付けて一般化できる技術にはなり得ないだろう)。
速読とは、流し読みにより、自分が読むべき部分と読む必要が無い部分を明確にし、前者のみを読むことで時間を短縮する技術だと思う。
そのため、速読とは、読まないための技術というイメージがしっくりくる。
本書の著者が説明する速読は私の想定する速読に近いと思われる。
(3)本の内容を記憶する方法
ア 読了した本を他者に譲ることにより、その本との一期一会の状況を作出し、自分に記憶をするプレッシャーを与える。
また、「他者に説明するなら、どのようになるだろうか」という意識で読む。
頭の中にある知識と比較、照合しながら読む。
イ この点は非常に重要である。
アウトプットを前提としたインプットは当該対象を生煮えのまま飲み込む事態を回避することにつながる。
(もっとも、とりあえず生煮えのまま飲み込んでおいて、事後的に知識を整理する方法もあり得ることは否定しない。)
また、未知の概念も既知の概念との比較により理解することで理解が容易になる。
この点に関しては、『本を読む本』(モーティマー・J・アドラー他著)『法的思考の探求』(一条法樹著)等でも説かれている。
機会があればこれらの本も紹介したい(特に、『法的思考の探求』は名著中の名著であると考えている)。
- 作者: J・モーティマー・アドラー,V・チャールズ・ドーレン,外山滋比古,槇未知子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1997/10/09
- メディア: 文庫
- 購入: 66人 クリック: 447回
- この商品を含むブログ (322件) を見る
(4)知識はどのように活用すればいいか
ア 本から得た知識・情報は、まず、ノートに整理する。
その際に自分の記憶、理解を自己判定する。
その内容に興味がありそうな者に話してみる。
発想や想像力の源泉は何かと何かを組み合わせることである。
イ これは、(3)における方向性と変わらないだろう。
(5)専門書・学術書を読む時に大切なこと
まず、基本となる1冊を見つけることが重要である。
著者が一定の立場から主張する事柄について「なぜそうなるのか」を追及することが肝要である。
(6)小説を読む時に大切なこと
小説は分析などせずに没入する。
なお、この項ではノンフィクションの読み方についても述べられている。
ノンフィクションの読み方は、懐疑心と好奇心を念頭に置くことである。
(7)自分に合う本の見つけ方
固定観念を持たずに何でも読んでみることである。