知の収穫
1997年
1 概要
知の収穫=書評である。
著者が読書から得る成果を収穫祭に準えている。
第一章の書斎の収穫祭は一般書籍を対象としている。
第二章のMANGA TODAYはマンガを対象としている。
2 コメント
(1)書斎の収穫祭
私の関心には引っかかってこなかった。
本書は1997年に刊行されており(単行本は1993年)、 その当時の本を書評の対象としているため、あえて参考にしようと思うものは少なかった。
ただし、書評の合間に顔を出す小エッセイは面白く読めた。
「辞書の楽しみ」(16頁~)
『広辞苑』が現代仮名遣いに反抗した序文を書いていると説く。
「文庫、私はこう読む」(199頁~)
古典を馬鹿にしながら読むという新たな境地を開拓する。
「読書昇段」(237頁~)
読書には段位がある。もっとも、固定的ではない。
(2)MANGA TODAY
このマンガの書評の影響で、
『風雲児たち』、『喜劇新思想体系』を購入した。
後者については、あまり私には合わなかった。
購入はしなかったものの、内田春菊著『けだるい夜に』の書評は興味深かった。
性描写について、性交に至る心理の高揚や屈折を的確に描いた方がはるかにエロティックになるという指摘である(326頁)。
確かに、表現技法として、手の内をすべて開示するより、相手に想像力をかき立てることが有効であることは納得できる。
なお、呉氏の作品にはマンガについてより詳細に論じた『現代マンガの全体像』がある。