おすすめ ★★
近代ゴリラレベル ★★★
1 近代ゴリラ的タイトル
2 期待どおり、期待外れ
3 説教
1 近代ゴリラ的タイトル
「都市と野生の思考」ーまさに、本ブログのタイトルの言い換えである。
内容は、京大総長の山極氏と阪大総長を歴任した鷲田氏との対談である。
理系的知性と文系的知性のぶつかり合いであり、かつ、いずれもユニークな知性である。
タイトルと対談の設定を見て、即購入した。
もっとも、斜に構えた見方をすれば、このタイトルはレビィストロースへのオマージュであり、それほど新鮮な響きはない。
2 期待どおり、期待はずれ
山極氏が提供するゴリラの話はどれも興味深かった。
ゴリラ社会(?)と人間社会の共通点と相違点が示されており、示唆に富んでいる。
一方で鷲田氏が何度も提供する語源に関する話題はどれも退屈だった。
例えば、
遊ぶことを英語でplayと言いますが、これには演じるという意味もあって、そこには観客が想定されている。おもろいことをすれば拍手してくれる。遊びは人間社会の仕組みや社会的行動を考えるときに、とても大切な概念だと思います。*1
本書を手にとった者は、このような蘊蓄を求めていない気がする。
それ以外の話題に関しても鷲田氏は精彩を欠いているように思える。
いくつか読んだ彼の著作はどれもユニークであっただけに残念であった。
3 説教
本書の章の標題をいくつかとりあげると、「家と家族の進化を考える」、「食の変化から社会の変化を読む」などがある。
これらの標題を見て、私には嫌な予感がよぎった。
そして、ある意味想定通り、「今の社会が危ない」的な説教じみた論調が散見された訳である。
このような論調に新鮮さはなく、「鷲田先生、山極先生、あなたたちもかっ!」と思ってしまった。
ただ、時折、意表をついた見解に触れられるので、本書には一定の価値が見出される。
*1:28頁