近代ゴリラの読書感想文

元予備役。司法試験合格。国家総合職試験合格。

 近代ゴリラ=インテリジェントゲリラ

【読書感想文】呼吸入門 齋藤孝

呼吸入門

齋藤孝

角川新書

 

おすすめ ★★

近代ゴリラレベル ★★

 

 

呼吸入門  心身を整える日本伝統の知恵 (角川新書)

 

 

タイトル通り、斎藤孝氏が呼吸について述べた本である。
内容は、呼吸の効能、文化的観点からみた呼吸の意義、教育現場における呼吸を意識した実践、具体的な呼吸法の紹介などである。
上記の列挙から分かるとおり、本書は呼吸に関する抽象的な評論と具体的な実践知の双方を含んだものとなっている。
比率としては、抽象的な評論が多くなっている。
 
齊藤式呼吸法は非常にシンプルである。
「鼻から3秒息を吸って、2秒腹の中にぐっと溜めて、15秒かけて口から細くゆっくりと吐く」というものである(77頁、173頁)。
齊藤氏は「型」を引き合いに出し、シンプルな方法の有効性を説く。
シンプルな「型」を反復練習により習得することで、より高次の技法を習得できる段階に至れるということである。
入門を謳う以上、このアプローチは適切であろう。
 
呼吸を文化的な観点から扱った抽象論はいまいちだった。
どこかで聞いたことがあったような内容であったことに加え、そもそも、私が本書に求める目的(具体的な呼吸法の提示)と乖離しているからである。
一方で、教育現場で実際に呼吸法を取り入れている部分は興味深く読めた。
 
なお、齊藤氏は「気については語らない」としている。
気というのは感じるだけのものであり、客観的に検証することができないからだという。
この立場は非常に穏当であろう。
 
 
 
備忘
(頁)
41 腰が定まっていないと集中力は持続しない。
    →礼節に実利的側面が見いだされる
 
55 口先だけの人間は深い覚悟が身体にない。
   →言語以外の総体から情報を読み取る必要がある。
 
61 ピカソの呼吸力。
   長時間立ったまま描き続けた。
   アトリエに入るときに靴を脱ぎ、その瞬間にそこに肉体も置いてきてしまうような感覚。
 
69 理想は赤ちゃんの呼吸。
   どの瞬間にも無駄な力みのない身体。
 
75 丹田=力みの避雷針。
   どんなに力を入れても他の部分が力まない。
 
107 「意識的なリズム」
    歩くという反復動作を続けることで、気持ちが落ち着いてくる。
 
185 話に合わせて息を吐いていると相手の身体に同調しやすい。
 
203 指圧の極意。
   ◎自分が能動的にやっている時は、むしろ受動的な感覚を開いたほうがいい。