嘘の効用
末弘厳太郎
おすすめ ★★★
近代ゴリラレベル ★★★★
1 概要
我々は、嘘をついてはいけないと子供の頃から教えられてきた。
それにも関わらず、世の中には嘘が跋扈している。
それならば、嘘を上手く処理する必要がある。
物事には本音と建て前があり、後者を固定して前者の結論を導くことが「嘘の効用」である。
なお、末弘博士は、嘘を上手く使うことを超えて、嘘をつかずにそれを乗り越えようとする者を革命家と称する。
2 専門家の素人考え
末弘博士は、ある分野の専門家が他の分野についても専門家らしい顔をして素人考えを語ることの不当性を指摘する。
現在の社会を見渡せば、この注意喚起が適切であることは容易に納得できるだろう。
誰がどの立場で何を対象に何を言っているのか
それが何なのか(=言説の内容自体)、何故それを言っているのか(=ポジショントーク)。
言説に触れる際には十分注意したい。
3 教育について
親が全く子の要求をきかずに、親の考えのとおりに厳重に育てあげようとすれば、子は必ず「嘘つき」になります。No.171
つまり、親が過度に厳格に子供を教育することは、本音を隠蔽せざるを得ない状況に子供たちを追い込んでいることを意味する。
4 人間の本質について
「法」が合理的な根拠なしにその限度を越えた要求をしても、人は決してやすやすとそれに服従するものではありません。・・・とにかく「法」が社会の要求に適合しなくなると、必ずやそこに「嘘」が効用を発揮しはじめます。 No.191
人間は「公平」を要求しつつ同時に「杓子定規」を憎むものです。したがって一見きわめて矛盾したわがままかってなことを要求するものだといわねばなりません。No.297
備忘
(頁 kindle版)
No.128 偏狭な合理主義を駆逐して、もっと奥深い「合理によって合理の上に」言える思想を植えつける必要がある。