近代ゴリラの読書感想文

元予備役。司法試験合格。国家総合職試験合格。

 近代ゴリラ=インテリジェントゲリラ

【読書感想文】イチローに糸井重里が聞く

「キャッチボール」製作委員会 著
2019年

イチローに糸井重里が聞く (朝日文庫)

 
 
1 概要
 タイトルが全てである。
 まさに、イチロー氏に糸井重里氏がインタビューをする内容である。
 
 文庫は、2019に刊行されたが、内容は2004年の公開録画番組の書籍化であるため、近年のイチロー氏のインタビューを求める方は注意されたい。
 
 項目を以下に列挙する。
 
1回表 自分を見失ったとき
1回裏 自分を客観的に見ること
2回表 ほんとうの進化
2回裏 細いバット・神経の通るグラブ
3回表 一本のヒットがどんなにうれしいか
3回裏 他人とつきあうということ
4回表 野球の魅力には、終わりがない
4回裏 畑違いのことは、やるべきではない
5回表 家は野球をやるための投資
5回裏 犬って、自分の子供なんです
6回表 いいかげんなことはできません
6回裏 変わらないのはおかしい
7回表 人と違うことをやるのが基本
7回裏 「初心」ってなんだろう?
8回表 宿題をやったほうがいい理由
8回裏 「お金」ってなんですか?
9回表 あの家にいたときの気持ち
9回裏 自分の理想を求めるということ
 
 
2 コメント
 イチロー氏の言葉は箴言の形式で示されたときに最も「らしさ」が出る気がする。
 このことを意識してか、本書は、インタビューを収録した本編の後に、インタビューの中から印象的だったフレーズを切り取り、
「五十一個のイチロー哲学」として並べている。
 これらは本文中で示された言葉であるのに、短いフレーズで切り取って示されると違った言葉のように感じられる。
 
 イチロー氏は、この頃(30歳)からすでに修行僧と形容される職人気質を全面に出し(まえがき参照)、くせ者的な名言を量産している。
 もっとも、この時点における個々の言葉の深みは、その後のイチロー氏のそれには及ばないように思える(逆に粗削りさを楽しめるという側面はある。)。
 
 本書のインタビューは、全体としては緩い雰囲気で展開されているが、時折放たれる糸井氏の踏み込んだ質問によりイチロー氏の意外な側面が引き出される場面があるのは面白い(お金に関する質問については、あとがきで絶賛されている。)。
 
 
シーズン中、大統領に夕食に招待された。どうする?*1
 
・・・イチローっていう人が考える、お金っていうのは何でしょうか?*2
 
 
備忘
(頁)
27 自分の行動の意味を必ず説明できる自信がある。
 
36 凡打をして、その凡打の理由が分かったときに打つ感覚をつかんだと言える。
 
57 聞いている側にとって聞き苦しいことを言い出したらそれが本音である。
 
71 勉強をして、学年で7番、8番くらににはなれたものの1番にはなれなかった。それゆえ、勉強は諦めた。
 
116 戦争に行った方には絶対に勝てない。自分の体で大変な苦労をした方にはかなわない。一方で最近の眉毛を抜いている子を見たら、負ける気がしない。
 
128 宿題をやるとストレスになる。でも、そうすると身体を動かしたくなる。やりたくて仕方がない練習となり、効果的になる。

*1:80頁

*2:136頁