エゴを抑える技術ー賢者の視点を手にいれる
ライアン・ホリデイ著
金井啓太訳
パンローリング
1 概要
エゴの暴走により問題が生じた歴史上の人物や事例を多数とりあげる。
その上で、エゴに対する対処を説く。
2 コメント
「エゴを抑える技術」というよりは、「エゴを認識する」という向きが大きい。
著者が思いつく限りのエゴの形態を歴史的事例と共に紹介する形式である。
体系的な紹介ではない。
自らがエゴに陥っている時ほど、エゴを認識することは難しい。
この陥穽から抜け出すためには、不断にエゴに関する自己点検をする他ない。
エゴに関する自己点検をする上で、本書で紹介されているエゴの形態、事例は足がかりになるだろう。
ベンジャミン・フランクリンが少年時代、兄の発行する新聞に匿名で寄稿していたのは有名な話だ。
「通りすがりのお節介焼き」のペンネームで書かれた手紙は評判を呼び、どこの天才が書いたのかと噂されたが、事の真相は分からずじまいだった。
・・・フランクリンは、もっと息の長い闘いをしていたのだ。
世論の動きを学び、自分の信条を自覚し、独自の文体をつくり上げ、機知やユーモアを磨いた。
まさにこれこそが、フランクリンが繰り返し用いた戦略だった。
ときには、ある競争相手を負かすために別の競争相手の新聞に文章を書いたこともある。
他者を引き立たせ、花をもたせてやれば、必ず恩恵が返ってくる―フランクリンはそう考えていた。(88から89頁)