新装版 山下泰裕 闘魂の柔道 必勝の技と心
山下泰裕著
2007年
1 概要
山下泰裕先生の技術書である。
「勝負についてー自分の力をいかに出しきるかー」という総論の後に、具体的な技の解説である各論が展開される。
2 感想
総論部分は、タイトルにある「技と心」のうち「心」についての解説である。
この総論部分は、別の競技、あるいは、競技以外の分野でも参考になる事項が多いと思われる。
やはり、ある特定の事柄を徹底的に突き詰めることで見える世界、領域というのは確かに存在する。
これを言語情報により受け取り、各々が咀嚼することには意味があるだろう。
以下では、いくつか気になった事項を取り上げる。
(1) 緊張について
試合前は、やはりかなり緊張した。一体全体、緊張しない選手などいるのだろうか。大切な試合の前は誰でも緊張する。それが当たり前だと思う。35~36頁
私はどんなに小さな試合でも緊張した。緊張すると相手の長所がずいぶんと大きく見える。そうするとますます緊張する。逆な見方をすれば、試合を前にして緊張しないような者は勝つ見込みも少ない。従って私は、いつも「緊張するのが当たり前」と自分自身に言いきかせていた。43頁
(2) 他人から盗むことについて
例えば私は、道場内においても相手の練習を観察する「見とり稽古」を常に心がけた。・・・ただし、ぼんやりと見ていたのでは効果はない。しっかりとした自分自身の課題を持って見る。そうすれば、それまで気づかなかった側面が見えてくる。28頁
なぜ先輩たちにはできて、自分にはできないのか?どこが違うのか?こういった疑問をもって見たのである。28~29頁
そして、総論の末尾は以下のとおり結ばれる。
お前が思っているほど、相手は弱くない。お前が思っているほど、相手は強くない。16年間の選手生活で、私が到達した一つの心境である。57頁