鈴木邦男の読書術 言論派「右」翼の原点
鈴木邦男
彩流社
平成22年
1 概要
読書術とあるが、本書の多くは、読書に関係のあるエッセイで構成されている。
完全にタイトル通りの内容は第4章のみである。
2 感想
本書で特に印象的な内容は、鈴木邦男氏が、複数の全集を読破していることである。
三島由紀夫全集の読破には脱帽である。
全集の読破と聞くと、鈴木氏には超人的な忍耐力が備わっているのではないかとか、通常のビジネスパーソンとは可処分時間が全く違うのではないかなどといった疑念(?)が頭をかすめるだろう。
しかし、蓋を開けてみれば、鈴木氏にとっても読みづらい本は強敵であり、読書を持続させる工夫をしていることが分かる。
等身大の悩みが示される。
時々、推理小説やら右翼のやさしい本なども入れながら、カタイというか読みづらい本は時間を決めて読む。
一日に一時間か二時間と決めて読むのである。
ひどい時は三十分にしたこともある。
読書全体がイヤにならないように面白くない本は少しずつ読んで何週間かでやっと読み上げることにする。
ハイデッガーやヤスパースなどはこの方法でやっつけた。222頁
鈴木氏の活動と知識の位置付けも興味深い。
知識や勉強量では世の学者先生に逆立ちしてもかなわない。
体験からしてもそうである。
では何をもって訴えるのか。
我々の感性だと思う。
そして民族派運動に於て、我々の感覚でとらえ、その問題意識を同じ世代の人間にぶつけて、共に考えるという点に、かろうじて我々の存在意義があると思う。213頁
この言説は、鈴木氏が全集を複数読んでいる読書家であることを知ることで、また異なる趣となる。